全 情 報

ID番号 07433
事件名 業務命令無効確認等請求事件
いわゆる事件名 阪神道路公団・阪神交通管理事件
争点
事案概要  阪神高速道路公団Y1から交通管理業務等を委託されている会社Y2の交通管理隊員で労働組合分会X1の分会の唯一の組合員で分会長でもあるX2が、巡回出勤依頼等に応じなければならない休憩時間について時間外手当等を求めたXらの提訴による訴訟の和解案では、Y2はXらに対し勤務時間割の変更について協議すべきこととされ、休憩時間確保のための勤務体制の改善すべきこととされていたにもかかわらず、時間割の変更が協議を経ずに実施されたことから、右変更措置に対してX2が異議を申し出たところ、別の勤務地へ配転命令がなされ、これを拒否したことを理由に賃金カットされたことから、右配転命令は不当労働行為及び不法行為に該当するとして(1)XらがYらに対し、慰謝料等の請求をし、(2)X2がY2に対し、右配転命令は無効であるとして、元の勤務地の従業員であることの地位確認及び賃金カット分の未払賃金の支払を請求したケースで、本件配転命令は時間割変更実施の抗議を理由としていることが明らかであり、前訴和解に至る交渉経過等を考慮すれば不当労働行為に当たり無効であり、またY2がXらとの協議義務を無視して一連の行為を構成するものであるから不当労働行為として一個の不法行為に該当するとして、(1)については、Y2に対する慰謝料請求のみが一部認容され、(2)については請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条1号
労働基準法11条
民法709条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1999年5月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 773 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴<後和解>)
出典 タイムズ1045号160頁/労働判例768号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 本件配転命令が原告X2の本件時間割実施に対する抗議を理由にしていることは明か(ママ)であり、これに前訴和解に至る以前からの原告らと被告会社の交渉経過を併せ考慮すれば、被告会社の原告らを嫌悪する意図は明か(ママ)であるから、本件配転命令は不当労働行為に当たり、無効であるといわなければならない。しかも、本件時間割への変更と本件配転命令は、被告会社が原告らとの協議義務を無視して本件時間割を実施しようとした一連の行為を構成するものであるから、不当労働行為として一個の不法行為となるものである。
〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕
 本件配転命令が無効である以上、原告X2が、これに従わず第二交通管理部で就労しなかったことをもって被告会社がなした賃金カットは理由がないから、原告X2は、被告会社に対し、前提事実4記載のとおり右賃金カットにより生じた平成七年三月から同年六月までの未払賃金一〇六万七〇八六円の支払を求めることができる。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 本件時間割の強行実施及び本件配転命令という不法行為による原告X2の精神的苦痛の程度を判断するに、本件時間割の変更は、勤務時間割における休憩時間の確保の問題に関する原告らと被告らとの間の長く激しい対立の後に成立した和解に基づいて、平成七年一月一日付の勤務時間割ができたにもかかわらず、これを何ら協議することなく変更したというもので、被告会社の対応は不誠実といわなければならず、また、本件配転命令は、本件時間割への変更に抗議した原告X2に対し、業務上の具体的な必要性が認められないのに、その正当な組合活動を嫌悪してなされた不当労働行為であること等諸般の事情を考慮すれば、原告X2の被った精神的苦痛を慰藉するためには五〇万円を要するというべきである。