全 情 報

ID番号 07463
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 合食事件
争点
事案概要  総務経理部総務課に配属され主任であった労働者が、支店の赤字により業務を合理化する目的のもとで行なわれた総務部内の業務の営業部門への移管に伴って、営業二部へ六か月間の社内出向を命じられ(労働者は仮処分を申立てしている)、出向命令解除後に再び総務経理部へ戻ったが、地位や給与に変更がないものの担当業務に変更が生じ、また正当な理由なく入室が禁じられている部屋へ立ち入ったこと、社内機密文書の透視を行ったこと等を理由に譴責処分がなされたため、(1)本件配転命令は債務不履行及び権利濫用により無効であることの確認、(2)本件出向命令以前と解除後で担当業務に変更が生じているのは債務不履行であり、また仮処分申立て以降、嫌がらせ行為がなされたとして不法行為責任に基づく慰謝料の支払を請求したケースで、(1)については、社内出向命令は既に解除されていることから社内出向の無効確認を求める部分は訴えの利益がないとして請求が却下され、(2)についても、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法625条1項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界
裁判年月日 1999年11月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 21538 
裁判結果 一部却下、一部棄却
出典 労経速報1743号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の限界〕
 原告は、被告において経理事務を担当していたA主任の後任として採用され、原告は、被告に採用されて以来一貫して経理事務に従事し、営業・管理事務職として処遇されてきている(前記一1(一)、(二))。また、原告の雇用保険加入手続の際に作成された採用証明書(書証略)には、原告の職種として「経理事務」と記載されている。
 しかし、右採用証明書には、当面原告が担当する職務を記載したにすぎないと解する余地があり、これをもって、直ちに本件雇用契約が職種限定契約であったと認めることはできない。むしろ、本件雇用契約書(書証略)には、原告の職種を限定する旨の記載がなく(前記一1(一))、被告の就業規則八条一項には配置転換等について規定されており(前記一1(二))、実際にも総務経理部に所属する入社一〇年以上の従業員三名について異動を経験したことのない従業員はおらず(原告本人)、被告においては頻繁とはいえないにしても人事異動の事例は珍しくはない(書証略)ことからすれば、被告は、原告の経験に期待して、当面原告を経理事務に従事させるために採用したが、それは職種を限定する趣旨ではなかったものというべきで、本件雇用契約が職種限定契約であると認めることはできない。
 なお、原告は、被告の事務処理規定(書証略)もその主張の根拠として挙げるが、各部門の事務分掌を明確にすることと職種を限定することはなんら関連性がないから、原告の主張を認める根拠とはならない。
 したがって、本件社内出向命令以前とその解除後で原告の担当業務に変更が生じていたとしても、被告の債務不履行ということはできず、また、それが権利の濫用に当たらない限り、被告の人事権の行使として許されるものというべきである。