全 情 報

ID番号 07556
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 中央洋書事件
争点
事案概要  洋書の輸入取次、販売等を行う会社(従業員約二〇名)が、負債八億円余を抱えて破産宣告を受けるに至り、その後、破産廃止決定を受けた。原告は同社の元代表取締役とその妻である元取締役であるが、同社の従業員で組織する組合(分会)およびその分会長、分会が加入している組合の三者(被告)を相手取って、彼らが、同社の破産宣告後も、原告らに雇用の確保、倒産に至る経過の解明、謝罪等を求めて団体交渉を要求したものの受け入れられず、原告らの自宅、転居先を訪れ、その付近でビラを配布し、シュプレヒコールを行う等の行為をなしたことで私生活の平穏を害され、精神的苦痛を被ったとして、同行為の差止めおよび損害賠償を求めたケースで、上記行為の一定範囲での差止めおよび損害賠償(慰謝料、五〇万円)が認容された事例。
参照法条 民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
裁判年月日 2000年5月12日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 5901 
平成9年 (ワ) 10798 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例792号129頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 被告らの行為は、原告らに団体交渉に応じる義務がない事項について団体交渉を要求するもので、その態様も、社会通念上、原告らの受忍限度を超えた違法なものであり、原告らは、被告らの行為により、私生活の平穏を著しく害されたものというべきである。そして、仮処分命令後も被告らは原告らに対する団体交渉要求行為を継続したこと、原告らはこうした被告らの行為により、近隣住民から苦情を言われたり、恐怖を感じたり、行動が制約されたりしたこと(前記一6(一)、原告X本人)、その他本件記録上認められる被告分会及び被告組合の行為の態様及びその回数、配布されたビラの内容などからすれば、原告らの被った精神的苦痛は小さくないというべきである。しかし、一方、こうした被告分会及び被告組合の行為は、平成4年から給与の遅配、不支給という事態が生じ、A会社が破産会社の経営に関与するなど破産会社の経営が危機に瀕し、混乱に陥った揚げ句、倒産に至ったにもかかわ端(ママ)を発しており、被告分会及び被告組合の行為については、原告らが破産会社の取締役であった当時、十分な責任を果たさなかったことがその一因となっていることも否定できない。
 こうしたことを総合的に考慮すれば、被告らの原告らに対する慰謝料としては、原告らそれぞれに対し各50万円が相当と認められる。