全 情 報

ID番号 07585
事件名 地位保全仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 知多南部卸売市場事件
争点
事案概要  卸売市場に参加している業者に店舗を賃貸する事業を行う第三セクターYの正社員として勤務し、定年まであと三年九か月であった従業員Xが、Yは補助金がなければ慢性的な赤字経営でその改善が必要であったことから、市場長より口頭で、三か月後にXを解雇し、その翌日からパートか臨時社員で勤務してもらう旨の通告がなされ、その一か月後に、就業規則の規定に基づき解雇予告通知書が交付されたことから、雇用契約上の地位の確認及び賃金支払を求めて仮処分の申し立てをした(これにより解雇予定日が一か月延期された)ケースで、本件解雇は唐突であり、Yの経営状態も唯一の正社員で長年勤務してきたXを解雇せねばならないほど逼迫しているとは認め難く、またXを臨時職員に切り替えることによる経費削減の効果も少ないことから、解雇の必要性を認めるに足りないというべきであるとし、更にX主張の整理解雇の見直し等の主張についても、Xの整理解雇を云々すべき段階に至っているとはいえないとして、本件解雇は解雇権を濫用したもので無効であるとして、地位保全と賃金の仮払申立てが一部認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 2000年7月26日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (ヨ) 497 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例794号58頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
 債務者は、我が国における雇用慣行の変化を指摘し、整理解雇の要件の見直しを主張しているところ、本件においては、そもそも解雇を正当化し得るほどに、債務者の経営が逼迫してきているとは認め難い上、いかに経営合理化のためとはいえ、解雇という手段をとる以前に、企業において解雇回避のためになし得る営業努力を尽くすのは当然の義務というべきところ、債務者において本件解雇前にこうした営業努力を十分になしたとは言い難い面が相当にあるのであって、債務者を臨時職員に切り替えることによって削減される経費の少額さなどに照らせば、いまだ企業として債権者の整理解雇を云々すべき段階に至っているとはいえないものと思料する次第である。
 そうすると、本件解雇が解雇権を濫用したものであり、解雇は無効であるとの債権者の主張は、疎明されているというべきである。