全 情 報

ID番号 07686
事件名 労働協約違反の業務命令の効力停止仮処分命令事件
いわゆる事件名 共同交通事件
争点
事案概要  一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とする株式会社Yのタクシー乗務員Xら九名が、隔日勤務により就労していたところ、Yから日勤勤務又は夜勤勤務を命ずる業務命令がなされたが、Yに対し右業務命令の撤回を求めたのに対し、Yは右業務命令を撤回をしたものの、改めて同様の内容の業務命令をしたことから、本案判決確定の日までに協定所定の隔日勤務にしたがって就労させる旨の仮処分を申立てたケースで、本件労働協約は就業時間及び勤務形態並びに賃金について協定したものにすぎず、いずれの勤務形態で就労するかを選択する権限の所在について協定したものではないと認められ、また労働者の同意なくして勤務形態を変更しないとの労使慣行が成立していたということもできないとして、申立てが却下された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 担務変更・勤務形態の変更
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働慣行・労使慣行
裁判年月日 2000年12月4日
裁判所名 札幌地小樽支
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (ヨ) 23 
裁判結果 却下
出典 労働判例799号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-担務変更・勤務形態の変更〕
 債権者らは、本件労働協約は、日勤勤務、夜勤勤務及び隔日勤務のいずれの勤務形態で就労するかを債権者らの選択にゆだねている旨主張する。しかし、(証拠略)(本件労働協約)によれば、本件労働協約は就業時間及び勤務形態並びに賃金について協定したものにすぎず、いずれの勤務形態で就労するかを選択する権限の所在について協定したものではないことが認められるのであって、債権者らの右主張を採用することはできない。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働慣行・労使慣行〕
 債権者らは、小樽営業所においては乗務員の同意なくして勤務形態を変更しない旨の労使慣行が成立していたと主張する。しかしながら、一般に、就業規則等に基づかない取扱いが労使慣行として労使双方に対する規範性を獲得するためには、少なくとも、当該取扱いが長期間にわたって反復継続して行われてきたことを必要とすると解されるところ、仮に、債権者らが主張するとおり、Aは、平成6年11月ころ及び平成8年3月ころに小樽営業所の乗務員の勤務形態を変更した際、変更に同意した乗務員のみを対象としたこと、債務者は本件業務命令に至るまで小樽営業所の乗務員の勤務形態を変更したことがないことが認められるとしても、右事実のみではいまだ小樽営業所においては乗務員の同意なくして勤務形態を変更しないという取扱いが長期間にわたって反復継続して行われてきたということはできないから、債権者らの主張に係る労使慣行が成立したということはできない。したがって、債権者らの右主張を採用することはできない。