全 情 報

ID番号 07710
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 滝沢学館事件
争点
事案概要  高校を設置する学校法人Yの高校で常勤講師として約四ヶ月間フルタイム勤務したXが、採用事務担当者から今後一年間の勤務状況をみて問題がなければ専任教員とする旨の話しがあり、これを信頼して、他の学校からの就職の誘いも断り、Yの高校に常勤講師と勤務する旨の契約を再度締結し勤務していたが、翌年度の雇用契約を更新しない旨を告げられて解雇されたことから、本件契約の期間はXの適性を評価、判断するための期間であって、同契約の法的性格は解約権留保付雇用契約であること、ならびに本件解雇は合理的理由がなく解雇権の濫用として無効であるとして、本件高校の専任教諭としての地位確認及び賃金支払等を請求したケースで、本件契約は解約権留保付雇用契約であると解するのが相当であるとしたうえで、Yが主張する本件解約権行使の理由は、いずれも客観的に合理的であるとは言い難く、社会通念上相当性を欠いているというべきであり、本件解約権の行使は無効であるとして、Y高校の専任教諭たる地位にあることの確認及び賃金支払につき請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 2001年2月2日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 387 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例803号26頁
審級関係
評釈論文 小畑史子・労働基準54巻6号30~34頁2002年6月
判決理由 〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 上記認定事実によれば、原告と被告間の本件契約に際しては、未だ被告において国語科の教員についての採用予定が充足されていない状態にあり、このような状況の中で、本件高校において専任教諭として勤務することを希望していた原告に対し、被告の職員の採用事務等の担当者であったA課長から、今後1年間の勤務状況を見て問題がなければ専任教諭とする旨の話があり、これを信頼した原告は、他の学校からの就職の誘いも断り、平成8年4月から1年間、本件高校の常勤講師として、他の教員と変わらない職務を担当させられてきたこと等に鑑みれば、本件契約の期間は、その満了により雇用契約が当然に終了するとの趣旨のものではなく、原告の適性を評価、判断するための試用期間であったというべきである。そして、上記認定の各事実に照らせば、その法的性格は、解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。〔中略〕
 解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであると解するのが相当である。(最高裁判所平成2年6月5日第3小法廷判決、民集44巻4号668頁)〔中略〕
 原告は、赤点をとった生徒について、補講等によって進級させるように努めていたこと、原告が授業を担当した自動車科ないし情報処理科においては、進学を希望しない生徒が多いことから、授業中の私語や居眠り等が一般的にあったこと、原告が前任の教諭から引き継ぎを受けた際にもそのことが指摘されており、原告はそのような生徒には注意をしてきたこと等が認められるのであって、これらの点からみても、原告が特別指導の熱意や技量を欠いていたということはできない。〔中略〕
 原告は、生徒の生活指導等のために女子更衣室や女子トイレの巡回点検を行い、生徒の問題行動については担任に注意していたこと等が認められるのであるから、女生徒指導について、特段原告がなすべき業務を怠ったということはできない。〔中略〕
 被告の主張する本件解約権行使の理由は、いずれも、客観的に合理的であるとは言い難く、解約権留保の趣旨・目的に照らして、社会通念上相当性を欠いているというべきである。
 したがって、本件解約権の行使は無効であると解するのが相当である。〔中略〕
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 本件契約のような雇用契約関係においては、賞与が実質的に給与の一部としての役割を果たしていることが多い実情に鑑みれば、賞与も原告に支払われるべき賃金として加えるのが相当である。