全 情 報

ID番号 07841
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 明津運輸事件
争点
事案概要  Y1会社に雇用され普通貨物自動車の運転を含む運送荷役に従事していたX1が、助手Aとともに積荷のカーゴを貨物ホームに降ろすに際して、会社が指示していた手順とは異なる危険の大きい手順で行っていたが、助手がX1の指示によらずに、ラッシングベルト及びフックを外したため、やや下側からカーゴを支えていたX1がカーゴの下敷きとなり障害等級一級の後遺障害を残したことにつき、X1及びX2(妻)、X3(長男)、X4(長女)が、Y1及びY1の代表取締役Y2に対して、安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求したケースで、その請求が一部認容された事例。
参照法条 民法715条
労働基準法84条2項
民法722条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
裁判年月日 2000年5月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 4526 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 交通民集33巻3号907頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 Aは、民法四一五条に基づく責任を検討するまでもなく、民法七〇九条に基づき、原告X1に生じた損害を賠償する責任がある。そして、本件事故は、被告会社の業務の執行中に発生したのであるから、被告会社は、民法七一五条に基づき、原告X1に生じた損害を賠償する責任がある。〔中略〕
 原告X1は、被告会社における一般的作業手順とは異なる手順(貨物ホームに降りる者は、やや下側からカーゴを支えることになり、危険が大きい手順といえる。)で本件カーゴを貨物ホームに降ろそうとした上、Aが本件カーゴをつかんで制御していると安易に信頼し、Aに声をかけて共同することなく本件カーゴとともに後ずさりし、両脇に飛び退くなど比較的容易に下敷きになることを回避することが可能であったと考えられるのにこれを怠り、本件カーゴの下敷きになった過失があるというべきである。
 本件事故の態様、被告Aと原告X1の過失の内容などの事情を総合すると、原告X1の過失割合は五〇パーセントとするのが相当である。〔中略〕
〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 労働者が労災給付を受けたときは、その給付の限度で損害賠償請求権は減縮し、また、当該給付を得たものと同視し得る程度にその履行が確実であるという場合も同様に解すべきである。