全 情 報

ID番号 07849
事件名 建物明渡等請求事件
いわゆる事件名 日本鉄道建設公団事件
争点
事案概要  Y1及びY2は、国鉄職員であり、また全動労の組合員であったところ、昭和六二年四月に実施された国鉄改革で、北海道で勤務できるJR北海道ないしJR貨物の北海道支社への採用を希望したものの、日本国有鉄道改革法二三条所定の採用候補者名簿に登載されず、両社に採用されなかったため清算事業団職員とされるとともに、同事業団職員の再就職促進に関する特別措置法に基づいて再就職の機会確保、援助を受ける者とされたが、再就職をしないまま推移したため、同特別措置法所定の再就職促進業務の終了に伴い、平成二年四月一日、事業団を解雇され、X(日本鉄道建設公団)から事業団宿舎の明渡しが求められたケースで、その事業団宿舎の明渡請求は信義則違反ないし権利濫用にならないとしてその請求が認められた事例。
参照法条 日本国有鉄道改革法1条
日本国有鉄道改革法23条
民法1条2項
労働組合法7条
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 被解雇者・退職者の退去義務・退寮処分
裁判年月日 2000年9月21日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 1414 
裁判結果 認容(控訴(後和解))
出典 タイムズ1069号195頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-寄宿舎・社宅の利用-被解雇者・退職者の退去義務・退寮処分〕
 事業団が引き継いだ宿舎については、事業団と承継法人との間に、再抗弁2(一)のとおりの宿舎利用協定が締結されたこと、また、事業団とJR北海道等との間においては、右宿舎について、同2(二)(三)のとおりの一時使用を承認する旨の約定及びその使用期間を平成一〇年三月末日まで更新する旨の約定がそれぞれ締結されたこと、更に、JR北海道の社宅等取扱規程においては、同2(五)のとおり、社宅の明渡条項が定められていること、なお、事業団がJR北海道に対し右のとおり一時使用の承認を更新した宿舎については、平成九年四月までに、そのすべてについて明渡しを受けたことが認められる。
 (二) 右認定の事実及び前記四で認定の事実からみるならば、国鉄の分割、民営化の際、仮に、被告らがJR北海道の職員として採用され、その後、同職員として本件各宿舎を利用していたとしても、原告は、被告らの使用に係る本件各宿舎の敷地を売却するため、遅くとも平成一〇年三月末日ころまでには、JR北海道に対しその明渡しを求め、JR北海道も、それに応じて、本件各宿舎を利用する被告らに対し、右宿舎での居住を「明らかに不適当」(JR北海道・社宅等取扱規程一八条(6))であるとして、その明渡しを求めたものと推測される。そして、前記四において認定の諸事情からみるならば、本件各宿舎の利用が客観的に「明らかに不適当」とみなし得ることも十分に肯定できるものというべきである。〔中略〕
 仮に、被告らがJR北海道等の承継法人の職員に採用され、本件各宿舎を使用していたとしても、結局、その明渡しを要するに至ったであろうことは明らかというべきである。
 3 そうすると、右の事実に、前記四における認定判断を合わせ考慮するならば、被告らにおいては、国鉄の分割民営化当時において事業団の職員とされたか、JR北海道等の承継法人の職員とされたかにかかわりなく、すなわち、被告らの主張に係る国鉄等による不当労働行為の有無にかかわりなく、本件各宿舎の明渡しに応じるべき立場にあるものといわざるを得ない。
 4 そうであれば、事業団及び原告における本件各宿舎の明渡請求権は、右の不当労働行為により生じたもの(すなわち、不当労働行為がなければ生じなかったもの)というべき関係にはないから、被告ら主張のように、原告の本訴における右請求権の行使が、信義則違反もしくは権利の濫用にあたるものとみなすべき前提を欠き、信義則違反等と認めるべき余地はないものといわざるを得ない。