全 情 報

ID番号 07894
事件名 雇用関係確認等請求事件
いわゆる事件名 コンチネンタル・ミクロネシア・インク事件
争点
事案概要  アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき設立された航空会社Yに平成七年から九年にかけて雇用期間を一年とする客室乗務員として採用され、その後契約を更新して勤務していたX1~X7七名が、搭乗者数の減少等による減便等に直面したYから平成一一年に同契約を更新しないが、限定された人員について六か月間の契約が可能である旨が伝えられたため、この契約に申し込んだが、X1~X7のうち五名は契約を拒否され、同契約を締結した二名についてもその後は契約が更新されなかったことから、本件契約(フライフォーファイブと呼ばれている)は一年契約の更新により実質的には五年間の契約期間を定める契約であり、本件雇止めは権利の濫用であるなどと主張して、雇用契約上の地位にあることの確認及び賃金の支払を請求したケースで、フライフォーファイブを説明するパンフレットや契約書の記載を全体として理解すればX1~X7において契約が更新されるとの期待が客観的にみて合理的なものであるとはいえず、実質的にみても雇用契約継続の信頼を抱くことが合理的であるといえる事情があったとは認められず、その他X1~X7に対する雇止めについて解雇制限法理を適用又は準用すべき事情は見出せないとし、又更新拒否の事情もそれが信義則に反しあるいは権利の濫用に当たるとはいえず、又そのように評価すべき事情を認めるに足りる証拠はないとして、本件雇止めは有効として、X1~X7の請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法14条
労働基準法2章
民法1条2項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2001年12月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (ワ) 16167 
平成11年 (ワ) 24417 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例836号119頁
審級関係 控訴審/07984/東京高/平14. 7. 2/平成14年(ネ)670号
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 イ 原告らは、フライフォーファイブ制度の下で契約期間が5年間まで更新されるのが通常であるとの合理的期待を抱かせる事情があったと主張する。
 なるほど、フライフォーファイブ制度の概要を説明したパンフレットの別紙2の記載部分によると、フライフォーファイブの制度は勤務年数に比例した累積的ボーナスの支給を約束して、契約した客室乗務員に対し再契約のインセンティブを提示していること、別紙2の記述には、前記のとおり被告が応募者に対し5年の就労を期待するような表現部分があること、再契約がなされないこともあり得るがそれはあってほしくない(hopefully unlikely)ことである旨述べられていることが認められる。また、フライフォーファイブは、それまで被告と雇用契約を締結していた正社員及び契約社員に対し提示されたものであるところ、この制度導入以前において、原告ら契約社員の業務内容は正社員と全く同様のものであったこと、被告が平成7年から導入した契約社員制度により採用された客室乗務員に対し、フライフォーファイブ導入前に更新拒絶がなされた例はないこと、被告は、原告ら契約社員との当初契約締結に先立ち、約2か月の期間と費用をかけて正社員と同様の訓練を施していることは前記認定のとおりである。このような事情からすると、原告ら契約社員の地位にあった者がフライフォーファイブに基づく最初の1年契約又は6か月契約を締結するにあたり、当該契約が5年間にわたり更新されるものとの期待を抱いたとしても無理からぬ面はある。
 しかしながら、他方で、上記第1次フライフォーファイブのパンフレットには、このプログラムが1年ずつの契約であって、契約当事者いずれかの意思により更新されないことがあり得ることが説明されており、これが契約書(別紙3)の契約条件にも明記されていることは前記のとおりであるから(第2次フライフォーファイブに関しても同様である。)、フライフォーファイブを説明するパンフレットや契約書の記載を全体として理解すれば、原告らにおいて、フライフォーファイブによる契約が更新されるとの期待が客観的にみて合理的なものであるということはできない。また、前提事実によれば、第1次フライフォーファイブに基づく最初の1年契約は、それ以前に原告らが被告との間で締結していた期間1年の契約満了前の平成10年4月1日又は5月1日を契約期間の始期としており、従前の契約の更新契約としてではなく、新たな制度の下での契約として締結されたものである上、実質的にみても、X1を除くその余の原告らは、いずれも平成9年4月中旬以降に被告に期間1年の条件で採用された契約社員であって、フライフォーファイブ導入前からの旧契約の期間を通算しても、雇用関係が継続するとの信頼を抱くのが合理的といえるほど長期の雇用契約関係にはなく、原告X1についても、平成8年及び平成9年にそれぞれ期間1年として契約が更新されてはいるものの、旧契約による就労期間は通算3年弱にすぎず、かつ、平成9年の更新契約に際して作成された契約書には、この期間満了後の契約更新は行われないことが明記されていたことに照らすと、他の原告らと同様、雇用契約継続の信頼を抱くことが合理的であるといえる事情があったとは認められない。
 以上を総合すれば、原告らの契約更新への期待が客観的にみて合理的なものであるということはできず、その他、本件原告らに対する雇止めについて、解雇制限法理を適用又は準用すべき事情は見いだせないから、この法理により被告の雇止めを制限すべきとの原告らの主張は採用することができない。
 ウ そして、被告が原告らとの契約を更新せず、第1次及び第2次のフライフォーファイブプログラムを終了させるに至った事情は前記認定のとおりであるところ、これまで認定した全事情を考慮しても、被告が原告らとの間で契約を更新しないことが信義則に反し、あるいは権利の濫用にあたるとはいえず、またそのように評価すべき事情を認めるに足りる証拠はない。