全 情 報

ID番号 07902
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 松下電器産業事件
争点
事案概要  電気製品等の製作販売会社Yに英会話講師として雇用されたX(オーストラリア国籍を有している)が、Yとの間で語学教育部の英会話講師として社員にビジネス英会話を訓練するという業務内容で雇用期間を一年とする契約(ゴールド契約・本件雇用契約)を数回更新したが、その後更新拒絶されたことから、XとYとの雇用契約は実質的に期間の定めのない雇用契約の状態で存続してきたから、その更新拒絶には解雇法理が類推適用されるが、本件更新拒絶には合理的理由がなく無効であると主張して、Yに対し、従業員たる地位の確認及び賃金の支払を請求したケースで、Yにおける語学講師は授業時間以外拘束されるものではなく、他に勤務しても差し支えないもので、Xにおいても他に勤務しており、担当した授業時間は、多い年でも週に三クラス(週に七時間半)であるうえ、語学教育は会社の主たる事業ではなく、主として従業員に語学教育を行うことを目的としたものであって、プログラムが一年単位で、一年ごとに生徒数が増減する性質のものであって、更新手続も更新時期ごとに雇用契約書を作成して更新してきたものであることからすると、雇用契約は、純然たる期間の定めのある雇用契約であって、これが実質的に期間の定めのない雇用契約の状態で存続してきたとはいえず、また雇用契約書には契約が更新されることを予定した約定が規定されていることは認められるが、これも必ず更新されることを期待させるものとはまではいうことはできず、そのほか契約更新の合意がない限り新たな契約関係の成立はないなどとされ、Xの雇用契約は期間満了により終了したとして、請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法14条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2001年12月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 14363 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労経速報1807号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 原告は、被告においては、平成七年四月からは、一クラス、すなわち週一回の授業を担当し、平成八年四月からは二クラス、すなわち週二回の授業を担当し、平成九年四月からは三クラス、すなわち週三回の授業を担当したが、その後、この担当回数は、平成一〇年四月からは二クラス、週二回、平成一一年からは一クラス、週一回と減っていったこと、原告と雇用契約の更新に当たっては、毎年、更新時期に、期間を明示した契約書を作成して更新していたこと、外国人のビザの有効期間は一年であること、被告における英語教育のプログラムが一年単位で、一年ごとに生徒数の増減が予想されること、被告は、英会話講師として六〇人以上雇用しているが、毎年二割近くの者が雇用契約を更新せず、講師の平均的な勤務期間は四年程度であることが認められる。
 原告は、本件雇用契約の更新手続が形式的なものとなっていた旨主張するが、上記認定のように、毎年、授業日数も異なっており、契約書の作成もされているのであって、更新手続が形骸化していたとは認めることはできない。
 これらの事実に鑑みるに、被告の語学教育部における語学講師は、授業時間以外を拘束されるものではなく、他に勤務しても差し支えないもので、原告においても他に勤務しており、担当した授業時間は、多い年でも、週に三クラス、すなわち、週に七時間三〇分であるというものであるうえ、語学教育は被告の主たる業務ではなく、主として従業員に語学教育を行うことを目的としたものであって、英語教育のプログラムが一年単位で、一年ごとに生徒数が増減する性質のものであって、更新手続も、更新時期ごとに、雇用契約書を作成して更新してきたものであることからすると、本件雇用契約は、純然たる期間の定めのある雇用契約であって、これが実質的に期間の定めのない雇用契約の状態で存続してきたということはできない。
 また、原告は、本件雇用契約が、期間満了後の継続雇用を期待することに合理性が認められる状態に至っていた旨主張するが、本件雇用契約において、被告が更新を約束したとは認められず、上記認定のとおり、一週間における就労時間は少なく、本件雇用契約の拘束性が低いもので、手続的にも、一年ごとに契約書を取り交わし、毎年、授業時間などにおいて内容が変化していたことに鑑みれば、継続雇用を合理性をもって期待させる状態には至っていなかったといわなければならない。本件雇用契約の契約書には契約が更約されたことを予定した約定が規定されていることは認められるが、これも、必ず更新されることを期待させるものとまではいうことができず、上記判断を左右するものではない。