全 情 報

ID番号 07903
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 ベニヤ事件
争点
事案概要  紳士用品の販売等を目的とする株式会社Y1(本件訴訟系属後吸収合併した会社が訴訟承継)に雇用された後その関連会社に転籍し、Y1関連会社の商品振替伝票の整理、集計や備品の出荷管理等の総務を担当していたXが、次長に対し馬鹿呼ばわりしたこと、次長宛荷物を無断で開封しないようにとの次長の業務上の命令を無視し、そのつど注意されていたにもかかわらずこれを繰り返し、部長が注意書を交付した際にはその眼前で破棄し、これに従わない態度を明示したほか、職場の上司宛の電話や他の従業員に電話で、何の脈絡もなく次長が多額の借金をし、金銭に困っているかのように言いふらす一方、従業員や常務に対し、当時発生した強盗事件の犯人がY1本社内におりこれをXが知っているかのように言いふらし、副社長等から言動を慎むように注意されたにもかかわらず、かえって次長を名指しで上記強盗事件の容疑者扱いとし、部長が事実関係を隠匿し証人的立場にあるXを威圧して口封じを図る等の違法行為を行っているとして部長を威嚇するような趣旨の警告書を発し、これを社内の枢要な地位にある常務等に送付したため、就業規則の規定に基づき、上司等に対し暴言をはき、業務命令違反等を繰り返し、再三の注意にもかかわらず改善されなかったこと、特に次長に対するいわれのない刑事事件に関する中傷は同次長の名誉を毀損するだけでなく重大な職場秩序、規律違反に当たるとして、懲戒解雇されたことから、XがY1に対し、本件解雇は就業規則違反や業務命令違反事実が全くないのになされた違法、無効なものであると主張して、雇用契約上の地位確認を請求したケースで、Xの行為はY1の職場内の秩序を乱す重大な行為であり、就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するから、本件懲戒解雇は理由があり、かつ相当であるとして、Xの請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 2002年1月18日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 24049 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労経速報1811号15頁
審級関係 控訴審/07982/東京高/平14. 6.27/平成14年(ネ)1149号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 上記認定事実によれば、原告は、上司であるA次長に対し、馬鹿呼ばわりするなど上司を上司と思わぬ暴言をもって応対し、A次長宛荷物を無断で開封しないようにとのA次長の業務上の命令を無視し、しかもその都度、上司のB部長から書面をもって注意されていたにもかかわらず、これを繰り返し、注意書四に至っては、これを交付したB部長の眼前で破棄し、これに従わない態度を明示している。この点に関する原告の言い分は、荷物の中身がA次長の部下である原告や他の事務員が処理すべき書類であるから、原告がこれを開封するのに支障はなく、そもそも開封を禁じるA次長の指示が不適切であって、原告がこれに従う必要はない、ということのようであるが(証拠略)、A次長が上記の措置を取ったのは、総務次長としてY1商事宛の荷物や文書の内容を把握する必要があるためであって、部下である原告がこれに従うのは当然である。原告の言い分は、部下が自己の判断で上司の業務命令に従うか否かを決定しうるとするもので、職場規律や職場秩序の維持という観点から到底容認できるものではなく、原告の上記行動を正当化しうるものではない。〔中略〕
 五月初めころから、職場の上司(B部長、C常務)宛の電話や、被告の他店従業員に電話で、何の脈絡もないのに、A次長が多額の借金をし、金に困っているかのように言いふらす一方(1(4)ア、イ)、被告従業員やC常務に対し、当時発生した強盗事件の犯人が被告本社内部におり、これを原告が知っているかのように言いふらし(1(4)ウ、エ。原告の念頭にあったのがA次長であることは前記認定の経緯から明白である)、五月一二日、Y2副社長やB部長からそのような言動を慎むよう注意されたにもかかわらず、かえって、A次長を名指しで上記強盗事件の容疑者扱いとし、D部長が事実関係を隠蔽し証人的立場にある原告を威圧して口封じを図る等の違法行為を行っているとして、D部長を威嚇するような趣旨の本件警告書を発し、しかもこれを被告社内の枢要な地位にあるC常務やE営業部長宛に送付した。
 上記行為が、全く根拠のない邪推あるいは思い込みに基づき、A次長やD部長、さらにはY2副社長をも誹謗中傷し、その名誉を傷つけるものであることは明白であって、被告の職場内の秩序を乱す重大な行為というべきである。