全 情 報

ID番号 07931
事件名 遺族補償年金給付等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 住友電設・名古屋東労基署長事件
争点
事案概要  電気設備等の設備工事を業とする会社で電気設備工事技師として勤務していたAは、複数の病院に通勤して気管支喘息の治療を受けていたが、B住宅電気設備の工事の現場代理人となってから残業や休日出勤が増加し、帰宅しても疲労がほとんど回復せず、また深夜に喘息発作で目が覚め眠れない日が多くなるという状態であったが、その後、工事終了により体調が優れないとの理由で内勤の業務に従事するようになったものの、結局、人手不足から電気設備工事の担当をするようになったことから残業時間や休日出勤が増加し、これに伴い喘息発作が毎晩のように起き、睡眠や朝食も十分に取れない状態が続いていたところ、気管支喘息の重篤な発作による呼吸不全により死亡したことから(死亡当時四二歳)、Aの妻Xが名古屋労働基準監督署長Yに対し、Aの死亡は業務上の事由によるもの等と主張して、遺族補償給付等を請求したところ、不支給処分とされたことから、右処分の取消しを請求したケースの控訴審で、Aの気管支喘息が重症化したのは過重な業務、喫煙習慣及びメジヘラの長期間、大量使用による気管支喘息のコントロール不良の相乗効果によるとしたうえで、気管支喘息の重症化には、B住宅電気設備工事の極めて過重な業務が相当大きな要因となっていたこと、死亡直前の頻繁な喘息発作の発症についても、死亡直前に従事していた工事におけるAにとっては過重な業務がかなりの影響を及ぼしていたことを総合的に考慮すると、Aの死亡は業務が基礎疾病をその自然的経過を超えて悪化させたことにより発生したものと認めるのが相当であり業務起因性が認められるから、右処分を取り消した原判決は相当であるとして、Yの控訴が棄却された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働基準法施行規則別表1の2第9号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
裁判年月日 2002年3月15日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (行コ) 30 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例827号126頁
審級関係 一審/07381/名古屋地/平11. 9.13/平成6年(行ウ)33号
評釈論文 梶川敦子・賃金と社会保障1347号75~81頁2003年6月10日
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 次のとおり加除訂正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第三」記載のとおりであるから、これを引用する。
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
 労働者の健康状態は多様であり、基礎疾病を持つ者も少なくなく、基礎疾病の種類、程度によって労働者が従事する業務が与える悪影響の程度も異なると考えられるから、同様の業務に従事する同僚の平均的水準を基準とするのみでは、その過重性等を判断し難い場合も多いと考えられるので、基礎疾病を有する労働者の業務の過重性等は当該労働者の健康状態の実質をも考慮して判断すべきものというべきである。