全 情 報

ID番号 07942
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 メイテック事件
争点
事案概要  各種広告の企画、立案、製作等を目的とする会社Yの取締役であったX1及び課長であったX2(すでに退職)が、Yに対し、〔1〕X1は、名目的な取締役であって給与は賃金であり、給与の減額は同意なくなされたものであり無効と主張して、未払賃金の支払を、さらに、〔2〕X1の競業会社設立行為は忠実義務違反であるとして取締役を解任し取引先に通知したことはX1の名誉を毀損するものであるとして損害賠償の支払を、〔3〕X2はX1の忠実義務違反行為に加担し競業会社の役員に就任した行為が懲戒事由に当たるとして退職金を支払わなかったことからその支払を請求したケースで、〔1〕X1の給与の減額分は取締役就任に伴って増額した金額の範囲内であるから、取締役報酬の性質を有するものとして請求が棄却、〔2〕X1の競業会社設立準備は取締役の忠実義務違反であり、取締役辞任後の解任手続、退職前に退職後の取引申入調査を依頼したことは不法行為に該当しないとして請求が棄却、〔3〕X2が退職後競業会社の役員になったことは懲戒解雇事由に該当し、また、在職中の功労を抹消させるに十分であるとしてX2の退職金減額は有効として請求が棄却された(なおX2は懲戒処分によって退職した者ではないが、懲戒解雇事由は退職届提出後に判明したものであり、Yに与えた損害が非常に重大であり就業規則には会社に損害を与えた場合に退職金を減額できる旨の規定もあることにかんがみればかかる場合も懲戒解雇処分時の退職金減額(不支給)規定の対象に含まれるとされた)事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法89条3号の2
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 競業避止と退職金
賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 2002年3月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 6027 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労経速報1802号26頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-競業避止と退職金〕
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 退職金規程によれば、原告X2の勤続年数は九年九か月であるから、その基本退職金は、五五万七二五0円となる。そして、加算金は、課長としての期間は五年を経過しているから、一0万六000円を肯定できるが、課長となる前の主任の期間三年については、その加算金を案分比例で算出する旨の規定はなく、その根拠がないといわなければならない。そうすると、同規定によって算出した原告X2の退職金の額は六六万三二五0円となる。
 ところで、(書証略)の就業規則が被告の就業規則かどうかは疑問がないではないけれども、原告X2が単に原告X1の誘いに応じて退職しただけではなく、営業目的が競合する新設会社の設立に出資して協力し、退職すると直ちにその新設会社で雇用され、かつ役員となったことは、その四四条の懲戒解雇事由(少なくともその一一号)には該当するということはできる。そして、被告代表者の尋問の結果によれば、原告らを含む従業員が退職し、新会社を設立したことによって、被告はその営業を継続できなくなったことを認めることができ、これは原告X2の在職中の功労を抹消させるに十分なものであるから、原告X2の場合、退職金を減額することを妨げる事情はない。ただ、上記退職金規程六条は、懲戒解雇処分を受けて退職した場合には退職金の額を減額し、又は全部を支給しないことができると規定しているところ、原告X2の場合、懲戒処分によって退職した者ではないといえるのであるが、上記懲戒解雇事由は、原告X2が退職届を提出した後に判明したものであって、被告に与えた損害が非常に重大なものであり、就業規則には、会社に損害を与えた場合に退職金を減額できるとの規定もあること(上記退職金規程五条)に鑑みれば、上記退職金規程六条は、かかる場合も含むものと解するのが相当である。