全 情 報

ID番号 07960
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 コニカ(東京事業場日野)事件
争点
事案概要  カラーネガフィルム等の光学用品の製造販売を主な業務とする株式会社Yの従業員Xが、〔1〕あるプリンターの使用につきその経験や能力に照らすと操作することに特に支障がなかったにもかかわらず、異常品質のプリントを大量に発生させ、それを知りながら、上司の指示に従わず職場内の誰にも改善策を相談しないまま二日間にわたり作業を続けるなどして、新製品発売までの作業日程を大きく混乱させ、複数の部門の多数の従業員に迷惑をかけたこと、〔2〕Xが勤務していたYのセンター内の営業上の重要な機密情報を社外に持ち出そうとする態度をとり、上司から二回にわたり改善の注意を受けたにもかかわらず従わなかったこと、〔3〕組合活動の一環として雑誌の取材に応じて自らの労働問題について発言し事実を歪曲したこと(Yが労働基準法に違反して残業代を支払っていないかのような印象を抱かせるもの)、〔4〕株主総会に出席し議事を混乱させたこと、〔5〕上司に対して粗暴な言動を行ったことがいずれも就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして、懲戒解雇されたことから、Yに対し、本件懲戒解雇は、懲戒事由、相当性がなく、手続的にも違法であり無効であると主張して、労働契約上の地位確認及び賃金支払等の請求をしたケースの控訴審で、〔3〕の取材に応じたことを除くすべての事項について就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとしたうえでXの行為態様や事後の対応をみると、Yが懲戒解雇を選択したことは裁量を逸脱したものといえず、解雇権の濫用に当たるとはいえず、懲戒手続についてもXに弁明の機会が与えられ、所定の手続を経たうえでの懲戒解雇の決定がなされているとし、本件懲戒解雇は客観的にみて合理的な理由に基づくものであり、社会通念上相当として是認できるとしてXの請求を棄却した原審の判断をほぼ全面的に引用してその判断を相当とし、Xの控訴が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 2002年5月9日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成14年 (ネ) 759 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働判例834号72頁
審級関係 一審/07898/東京地/平13.12.26/平成12年(ワ)5485号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-守秘義務違反〕
 当裁判所も、本件懲戒解雇は有効であり、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」1記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 控訴人は、前記認定のとおり多数の懲戒事由に該当する行為を重ねていたものであり、これらを総合すれば、本件懲戒解雇は、客観的にみて相当な判断と認められるのであり、本件において認められる事実関係に照らして、本件懲戒解雇が、控訴人において被控訴人による違法な時間外労働規制を指摘、問題としたことを発端として行われたものと認めることはできない。〔中略〕
 懲戒解雇し得る場合について控訴人主張のように解するとしても、控訴人は、前記認定のとおり多数の懲戒事由に該当する行為を重ねていたもので、それらに酌むべき情状も認められず、改悛の見込みはないものと認められ、被控訴人において控訴人を企業内に存置したのでは、企業秩序の維持が困難であると認められるから、控訴人に従前の懲戒処分歴がないとしても、控訴人を懲戒解雇にしたことは、客観的にみて相当なものというべきであり、控訴人の主張は理由がない。