全 情 報

ID番号 07981
事件名 給料請求控訴事件
いわゆる事件名 JR西日本(広島支社)事件
争点
事案概要  旅客運送業会社Yの従業員Xら二名が、Yでは労基法三二条の二に基づく一か月単位の変形労働時間制が採用され、就業規則には毎月二五日までに翌月の勤務指定を行うとするほか、業務上の必要がある場合は指定した勤務を変更するとの規定が置かれていたところ、右就業規則の規定に基づき、乗務員の事故予防のための現場訓練への参加や年次休暇取得などによる乗務員の欠員を理由に、いったん地上勤務に指定されていた勤務を乗務員勤務への勤務変更が命じられるとともに、勤務変更後の勤務時間のうち変更前の勤務時間を超過する部分についても、勤務変更後も週当たりの労働時間が四〇時間以内であれば賃金を支給しなくてよいとして、割増賃金が支払われなかったことから、一旦特定された労働時間は変更が認められず、勤務変更後の変更前の勤務時間を超過する部分は時間外労働であるとして、割増賃金の支払を請求したケースの控訴審(Y控訴)で、原審と同様、公共性を有する事業を目的とする一定の事業場においては、勤務指定前に予見することが不可能なやむを得ない事由が発生した場合につき、使用者が勤務指定を行った後もこれを変更しうるとする変更条項を定め、これを使用者の裁量に一定程度委ねたとしても、当該就業規則等の定めが法の要求する「特定」の要件を充たさないものとして無効ということはできないとしたうえで、本件就業規則は、勤務変更が予測可能な程度に変更事由を具体的に定めていないことから、特定の要件を満たさず無効であるとの判断がなされたが、超過勤務手当の額についてのみ原審の判断が一部変更された事例。
参照法条 労働基準法32条の2
体系項目 労働時間(民事) / 事業場外労働
裁判年月日 2002年6月25日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ネ) 254 
裁判結果 原判決一部変更、一部棄却(上告後取下げ・確定)
出典 労働判例835号43頁
審級関係 一審/07766/広島地/平13. 5.30/平成11年(ワ)1339号
評釈論文
判決理由 〔労働時間-事業場外労働〕
 次のとおり補正するほかは、原判決の「第3争点に対する判断」の説示と同一であるから、これを引用する。〔中略〕
 控訴人は、同項ただし書は勤務特定の要件ではなく、特定後の変更の要件を規定するものであるから、労基法32条の2違反の問題は生じないと主張するが、同条の規定に従って一旦特定された勤務を使用者が任意に変更し得ることとなった場合には、同条が要求する「特定」の趣旨が没却されてしまうのであって、同項ただし書の有効性を判断する上で、同条の「特定」の趣旨を勘案すべきであるから、同主張も失当である。〔中略〕
 「生活に対し、少なからず影響を与え、不利益を及ぼすおそれがあるから、勤務変更は、業務上のやむを得ない必要がある場合に限定的かつ例外的措置として認められるにとどまるものと解するのが相当であり、使用者は、就業規則等において勤務を変更し得る旨の変更条項を定めるに当たっては、同条が変形労働時間制における労働時間の「特定」を要求している趣旨にかんがみ、一旦特定された労働時間の変更が使用者の恣意によりみだりに変更されることを防止するとともに、労働者にどのような場合に勤務変更が行われるかを了知させるため、上記のような変更が許される例外的、限定的事由を具体的に記載し、その場合に限って勤務変更を行う旨定めることを要するものと解すべきであって」