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ID番号 08010
事件名 移送申立却下決定に対する抗告事件
いわゆる事件名 カワカミ(移送申立)事件
争点
事案概要  食品添加物の製造等を目的とする株式会社で、大阪市内に本社と支店を有するほか、関東営業所、九州営業所、東北営業所などを有しているX社(抗告人)の関東営業所に勤務していたYら二名(被抗告人)はそれぞれ大阪支店及び九州営業所に配転を命じられたが、配転に業務上の必要性がないと主張して、関東営業所所在地の戸田市を管轄するさいたま地方裁判所に、労働契約上それぞれの配転先で勤務する義務がないことを仮に定めることを求める内容の仮処分命令の申立てを行った(本案訴訟)のに対し、X社が上記仮処分命令申立事件について、さいたま地方裁判所に管轄がないとして、会社の本店所在地を管轄する大阪地方裁判所に移送の申立てを行ったケースの抗告審で、原裁判所(さいたま地裁)の判断と同様に、上記基本事件の本案訴訟は、Xの関東営業所における業務に関するものであることは明らかであり、その営業所の所在地を管轄する原裁判所(さいたま地裁)は基本事件の管轄裁判所に当たるから、基本事件についての管轄を有する者と認められるとして、Xの移送申立てを却下され、Xの抗告が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民事訴訟法5条5号
民事保全法12条1項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転・出向・転籍・派遣と争訟
裁判年月日 2002年9月11日
裁判所名 東京高
裁判形式 決定
事件番号 平成14年 (ラ) 1045 
裁判結果 棄却
出典 労働判例838号24頁
審級関係 一審/07963/さいたま地/平14. 5. 9/平成14年(モ)10265号
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転・出向・転籍・派遣と争訟〕
(1) 前記前提となる事実によれば、関東営業所は、民事訴訟法5条5号にいう「営業所」に該当するものと認められる。
 (2) 基本事件の本案訴訟は、従前関東営業所に勤務していた被抗告人らには、大阪支店又は熊本営業所で就労する義務が存在しないことの確認請求訴訟であり、基本事件の本案訴訟の主たる争点は、本件配転命令について、〔1〕 業務上の必要性があるか、〔2〕 不当労働行為の目的等の違法な目的によるものか、〔3〕 被抗告人らに著しい不利益を課すことになるかであり、〔1〕と〔2〕は事実上密接な関係にあると考えられる。
 そして、本件配転命令の業務上の必要性には、配転先の支店や営業所における業務上の必要性のほか、関東営業所における業務上の必要性も含まれることは明らかであり、一件記録によれば、抗告人も、被抗告人らが属する労働組合が東京地方労働委員会に提起した不当労働行為救済命令申立事件において、本件配転命令の理由として、外食産業等への営業活動を活発化させて関東営業所の収益力を向上させる必要から、被抗告人らを関東営業所以外の部署に配置する必要がある旨、関東営業所における業務上の必要性を主張していることが窺われる。
 確かに、抗告人が主張するとおり、仮に本件配転命令が無効であるとしても、被抗告人らは関東営業所で就労する義務はないものと解され、被抗告人らは当然に従前の勤務先である関東営業所で就労することになるわけではないが、以上で検討したところによれば、基本事件の本案訴訟は、抗告人の関東営業所の業務に関するもの(民事訴訟法5条5号)であることは明らかである。
 (3) したがって、関東営業所の所在地を管轄する原裁判所は、「本案の管轄裁判所」に当たるから、基本事件について管轄を有するものと認められる(民事保全法12条1項、民事訴訟法5条5号)。