全 情 報

ID番号 08075
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 岡山セクハラ(リサイクルショップA社)事件
争点
事案概要 ブランドバックや洋品等のリサイクルショップであるY1に勤めていた女性従業員Xが、上司であるY2及びY3からセクシュアルハラスメント行為を受け、外傷後ストレス障害になり、更にY1から不当に解雇されたことによって精神的苦痛を被ったとして、Y2、Y3及びY1に対し損害賠償を求めたケースにおいて、Y2の行為は、職場環境において原告に性的不快感を与え、原告の人格権を侵害するもので、不法行為を構成するとして、Y2個人の不法行為責任のほか、Y1の使用者責任及び職場環境配慮義務違反に基づく債務不履行責任を認める一方で、Y3の行為については、上司としての立場を利用したものではなく、個人として行われたものであるとして、個人として不法行為責任を負うが、Y1の責任は認められないとした事例。
参照法条 男女雇用機会均等法21条
民法709条
民法415条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 2002年11月6日
裁判所名 岡山地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 773 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例845号73頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕
 被告Y1の前記(1)アの行為について検討するに、これらの行為は、それだけでは違法性を有するとまでは認められない行為もあるが、これらの行為がA町店という女性である原告のみ又は原告とBしかいない小さな店内又は店の奥の従業員用の部屋で、勤務時間中、反復継続して行われ、原告が、これら被告Y1の行為に対して抗議をしたり回避の行動をとったりしているにもかかわらず、何度も行われたことからすれば、その態様、反復性、行為の状況、原告と被告Y1の職務上の関係等に照らし、客観的に社会通念上許容される限度を超えた性的不快感を与える行為であると認められる。また、前記1(3)のとおり、原告は、平成11年10月中旬ころから11月中旬ころまで、A町診療所及びC病院に毎日ないし1日おきに、体調の不調を訴えて通院していたことからすれば、原告は、主観的にも被告Y1の行為を不快なものと感じていたことが認められる。
 以上からすれば、被告Y1の上記行為は、全体として、職務環境において原告に性的不快感を与え、原告の人格権を侵害するものとして、不法行為を構成するといえる。〔中略〕
 被告Y1のセクハラ行為は、A町店内において、同人及び原告の勤務時間中に行われたものであるから、職務を行うにつきなされたと認めることができる。
 よって、被告会社は、被告Y1の行為につき使用者責任を負う。
 イ 被告Y2の行為について
 被告Y2の平成11年11月5日の行為は、被告Y1のセクハラ行為について原告が相談をした勤務後の食事及び更に別の店での飲酒の後、帰宅することになって原告のマンションにタクシーで移動した後に行われたもので、もはや実質的に職場の延長線上のものとは認められず、また、原告が被告Y2が自分のマンションの前まで来ることを許したのは被告Y2に対する感謝の気持ちもあったことによると認められるから、被告Y2が原告の上司としての立場にあることを利用した事情もうかがえず、同行為は、被告Y2の個人的な行動であって、職務を行うにつきなされたとはいえない。
 また、その後の多数回にわたる電話や訪問も、原告の勤務時間中のものもあるが、全体的に見れば、単に被告Y2が原告と会って話すために、職務と関係なく電話をかけたり訪問したりしたものであると認められ、職務を行うにつきなされたとはいえない。
 よって、被告会社は、被告Y2の上記行為につき使用者責任を負わない。〔中略〕
 使用者は、被用者に対し、労働契約上の付随義務として信義則上被用者にとって働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を負っており、セクハラ行為に関しては、使用者はセクハラに関する方針を明確にして、それを従業員に対して周知・啓発したり、セクハラ行為を未然に防止するための相談体制を整備したり、セクハラ行為が発生した場合には迅速な事後対応をするなど、当該使用者の実情に応じて具体的な対応をすべき義務があると解すべきであって、被告会社も原告に対し同様の義務を負う。