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ID番号 08179
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 榎並工務店(脳梗塞死損害賠償)事件
争点
事案概要 土木工事建設設計施工、ガス配管工事請負等を目的とする株式会社Yの従業員であったAが死亡したことに関し、Aの相続人であるXらが、Yに対し、Aの死亡はYの安全配慮義務違反による過労死が原因であるとして、債務不履行に基づく損害賠償を請求したケースで、一審は、Yの安全配慮義務違反および同義務違反とAの死亡との間の相当因果関係の存在が肯定しつつ、民法418条を適用及び類推適用し、損害額の3分の1を認容したが、控訴審は、一審と同様Yの安全配慮義務違反および同義務違反とAの死亡との間の相当因果関係を認めつつ、民法418条の適用及び類推適用による減額について、一審判決を変更し、損害額の5分の3を認容した事例。
参照法条 民法415条
民法623条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2003年5月29日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成14年 (ネ) 1673 
裁判結果 原判決変更、一部認容、一部控訴棄却(上告)
出典 労働判例858号93頁
審級関係 一審/08051/大阪地/平14. 4.15/平成10年(ワ)5264号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 当裁判所は、一審原告らの本件請求は主文の限度で理由があると判断する〔中略〕
 Aの一審被告における業務については、本件基準にいう短期間の過重業務及び長期間の過重業務のいずれの要件にも該当することが認められる(なお、本件基準は、業務による明らかな過重負荷が認められる場合として、上記以外に「異常な出来事」の発生を挙げるところ、引用にかかる原判決認定のとおり、Aは、平成8年5月22日から23日にかけての夜勤中に目に鉄粉が刺さる事故に遭ったが、その際、鉄粉が深層角膜に達し、激痛で2晩にわたり不眠状態に陥り、その結果疲労の極みに達するなど強度の精神的負荷をもたらしたものであり、かかる事態は突発的かつ予測困難というべきであるから、上記事故をもって「異常な出来事」が発生したと見ることができる。)。
 したがって、Aの脳梗塞による死亡は、同人が一審被告において従事していた業務に起因するものであり、上記業務との間に相当因果関係があることは明らかである。〔中略〕
 3 過失相殺、寄与度減額に関する一審原告らの主張について
 一審原告らは、一審被告が賠償すべき損害額について(大幅な)過失相殺、寄与度減額等を行うことは許されない等としてるる主張する。
 しかしながら、上記一審原告らの主張するところを十分検討してみても、前記一6で認定判断したとおり、本件においては、過失相殺に関する民法418条の適用ないし類推適用により、Aの損害額についてはその4割を減額するのが相当というべきであり、上記主張は全面的には採用し難い。