全 情 報

ID番号 08233
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 健康保険組合連合会事件
争点
事案概要 健康保険法に基づく法人である健康保険組合連合会Yの経営する被告病院に勤務していた医師であるXが、勤務時間外の無許可のアルバイト行為、部下の人事の私物化、勤務態度不良を理由に解雇されたため、解雇は無効であるとして、Yに対し、〔1〕労働契約上の地位確認、および〔2〕未払賃金の支払を請求したケースで、勤務時間外のアルバイトは黙認されており、また被告病院に不都合が生じたと認めるに足りる証拠が無いこと等、人事権は被告病院が有していること、勤務態度不良を認めるに足る証拠が無いことから、本件解雇に合理的理由は認められず解雇権の濫用として無効であるとして、〔1〕の請求について認容、〔2〕の請求について本判決確定日までの限度で認容、それ以降については訴えの利益を欠くとして却下された事例。
参照法条 労働基準法18条の2
労働基準法89条3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 二重就職・兼業・アルバイト
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 2003年11月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成14年 (ワ) 4202 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労経速報1858号21頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-二重就職・兼業・アルバイト〕
 上記認定によると、原告は、就業規則により、就業時間外のアルバイトについて届出を要するとなった後も、届出が必要であることを認識していながら届出をしなかったことが認められる。もっとも、被告病院では、従前から医師はアルバイトを行っており、被告病院もその点は認識していたのであり、就業規則変更後、被告病院には医師らからの届出は一件もないこと(人証略)、しかし、就業規則改正後も原告に限らず医師らのアルバイトは継続して行われていること(人証略)からすると、被告病院は、アルバイトの届出については、あまり厳しく対処してなかったことが窺われる。また、就業規則一三条三項は、被告病院の命により病院の業務として他の職に従事することを理由としない就業時間外のアルバイトについては、その旨を被告病院に届出なければならないと定め、但し、被告病院の業務に支障を来す場合にはその業務に従事することを禁止する旨定めており、この規定の定め方からすると、同規定は、被告病院では、就業時間外のアルバイトを届けさせ、被告病院の業務に支障を来す場合に限ってアルバイトを禁止するものと解釈することができ、一方、届出のない限り一切のアルバイトを禁止する趣旨とは解釈し難く、こうした規定の仕方の他、被告病院が医師のアルバイトを黙認していたと認められる上記事情、原告がアルバイトをしていたことによって被告病院に不都合が生じたと認めるに足りる証拠がないことに照らすと、放射線科の部長の地位にありながら、届出を無視していた原告の態度は、就業規則に反するといえる(就業規則五六条一三号)が、これをもって、病院の経営上やむを得ない事由がある場合にあたる(同一九条五号)ということはできない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 以上によると、本件解雇は合理的な理由が認められないから、解雇権の濫用であって、無効というべきである。
 したがって、労働契約上の権利を有する地位の確認及び賃金の支払を求める原告の請求はいずれも理由がある。