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ID番号 : 08727
事件名 : 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 : テー・ピー・エスサービス事件
争点 : 派遣会社に解雇された従業員が、解雇不当として損害賠償、未払賃金を請求した事案(従業員勝訴)
事案概要 : コンピューター運営の業務代行請負及びデータ作成の代行請負、労働者派遣事業等を業とする会社Yに雇用され親会社工場に勤務していた従業員Xが、違法に解雇されたとして損害賠償、未払賃金を請求した事案である。 名古屋地裁は、従業員が組合とともに、偽装請負を解消し適法な労働者派遣を行うよう要求し、労働局にその旨の行政指導を求めたことを嫌悪して、会社が本件業務から排除するだけでなく、会社からも排除するべく解雇という不利益な処分を行ったものと推認でき、違法な目的に基づいて、故意に、本来解雇する理由のない社員に解雇という不利益を与えたもので、不法行為にあたるとして損害賠償を命じた。そして、賃金請求についても、常用型の派遣労働者の場合、使用者は派遣先の業務が打ち切られても雇用を継続する義務があり、また雇用確保の措置を講じる余裕は充分にあったから、賃金請求には理由があるとした。
参照法条 : 労働基準法104条
労働基準法2章
労働組合法7条1項
民法709条
民法710条
体系項目 : 労基法の基本原則(民事)/労働者/派遣労働者・社外工
労基法の基本原則(民事)/労働者/委任・請負と労働契約
解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用
賃金(民事)/賃金請求権の発生/ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権
裁判年月日 : 2008年7月16日
裁判所名 : 名古屋地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成19(ワ)2780
裁判結果 : 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 : 労働判例965号85頁
審級関係 :
評釈論文 :
判決理由 : 〔労基法の基本原則(民事)-労働者-派遣労働者・社外工〕
〔労基法の基本原則(民事)-労働者-委任・請負と労働契約〕
〔解雇(民事)-解雇権の濫用-解雇権の濫用〕
〔賃金(民事)-賃金請求権の発生-ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権〕
被告は、原告が本件組合とともに、偽装請負を解消し、適法な労働者派遣を行うよう要求し、愛知労働局にその旨の行政指導を求めたことを嫌悪して、原告に対し、本件業務から排除するだけでなく、被告からも排除するべく解雇という不利益な処分を行ったものと推認することができる。〔中略〕
本件解雇は、違法な目的に基づいて(労働基準法104条2項及び労働組合法7条1号にも違反する。)、故意に、本来解雇する理由のない原告に解雇という不利益を与えたものであるから、原告に対する不法行為となる。〔中略〕
 本件業務は、実態は労働者派遣であるにもかかわらず、労働者派遣法の規制を免ようとするいわゆる偽装請負である点でも、また、原告に対する指揮命令をする者と原告を雇用する被告との間に多数の業者が介在する違法な多重派遣の形態である点でも違法であること、本件解雇は、このような違法状態を改善するため、法律上の権利として保護された労働組合活動や監督機関への申告を行った者を企業から排除するという強度の反社会的な行為であること、原告自身が本件解雇につき法的決着を付けた上で働きたいという個人的な意向を有していたことによる面があるものの、原告は、本件解雇後、平成20年4月当時まで定職に就いていないこと(原告本人)、その他、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本件解雇により原告が被った精神的苦痛を慰謝するには200万円が相当である。〔中略〕
本件解雇以前に本件業務が終了したことにより、原告が四日市市に居住する理由はなくなっているのであるから、本件解雇との間に相当因果関係は認められない。〔中略〕
 常用型の派遣労働者の場合、使用者は、派遣先の業務が打ち切られても雇用を継続する義務があり、特に、本件の被告は、本件業務の受注形態が違法なものであることを知りながら、原告をこれに従事させたのである(被告代表者)から、その違法な状態を正さなければならなくなった場合を想定して原告の雇用確保の措置を講じておくべきである。そして、本件業務は突然打ち切られたわけではなく、4か月余りも前からその違法性を指摘され是正を求められていたのであるから、雇用確保の措置を講じる余裕は充分にあったというべきである。したがって、被告が本件業務にかかる契約を継続できなかった結果として原告を休業させざるを得なかったとはいえず、債権者である被告の受領拒絶により労務提供ができなかったに過ぎない。
 よって、その余の点を判断するまでもなく、原告の賃金請求は理由がある。