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ID番号 08980
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 社会福祉法人東京都知的障害者育成会事件
争点 契約更新の拒否が権利の濫用であり無効であるかが争われた事案(原告一部勝訴)
事案概要 (1) 被告(Y)運営の寮の世話人として業務を行っていた原告(X)に対し、Yは寮が廃寮となったとして世話人業務に関するXY間の契約の更新拒絶をしたところ、Xは、①XY間の上記契約は雇用契約であり、上記更新拒絶は権利濫用として無効であると主張して雇用契約上の地位確認等を求め(主位的請求)、②予備的に、XY間の契約が雇用契約と認められない場合の業務委託契約上の地位確認等を求めて提訴したもの。
(2) 東京地裁は、委任契約に関する民法651条を類推適用し、Xの主張の一部を認容した。
参照法条 民法651条
労働契約法19条
労働基準法26条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/労働者の概念
労基法の基本原則(民事)/労働者/委任・請負と労働契約
裁判年月日 2014年9月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(ワ)21158号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 判例時報2251号92頁
労働判例1108号82頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 争点1(本件契約の法的性質(業務委託契約か雇用契約か))
Xは、本件契約は雇用契約である旨主張する。
しかし、本件契約は、前記一(1)エの認定事実のとおり、「業務委託契約書」の表題でXY間でこれまで契約締結がなされており、条項についても「次の業務を委託し、世話人がこれを受託した。」(第一条)と業務委託であることが明示されていること、≪証拠略≫によれば、本件契約の条項上、Yの就業規則の適用は予定されていないこと、要綱(乙四)においても、世話人について、Yの就業規則に定められている勤怠管理、人事考課制度、懲戒制度等の人事管理に関する定めはないこと、人事考課や懲戒制度が世話人にないことはXも本人尋問の際に認めていること、元世話人である証人Bも一人の支援者に一切の事業を丸投げするという形の運営である、事業主として任せられている旨供述しており、雇用契約のような指揮命令関係があるわけではないことを認めていること、がそれぞれ認められる。
以上の諸点に鑑みれば、本件契約が業務委託契約であることは明らかであり、Xの主位的請求は理由がない。
争点2(本件通知の有効性)
本件ではA寮の建物所有者であるCが建物を取り壊したことにより、A寮の運営が不能となり、「グループホーム運営に支障」が生じたこととなるため、Yは本件契約の更新を行うことはできない。
そうすると、本件通知が権利濫用であるとはいえず、Xの主張は理由がない。そして、本件通知が有効である以上、Xの予備的請求一は理由がない。
争点3(民法六五一条二項及び五三四条一項の準用及び類推適用の可否)
民法六五一条一項は、委任契約において、債務不履行責任に基づく解除とは別の解除権を認めた反面として、同条二項において相手方当事者からの損害賠償請求を認めた規定であって、債務不履行の事実は要件事実として不要である。また、業務委託契約は、契約の性質上、民法の典型契約のうち、委任契約に類する性格を有する契約であり、民法六五一条二項の適用又は類推適用の余地はある。
本件通知による本件契約が更新されないことの不利益がXにとって甚大であることは明らかである。
本件通知は、「解除」ではないので、民法六五一条二項の直接適用はない。しかし、以下の理由から、本件通知が「解除」に類するものとして民法六五一条二項の類推適用を認めるべきである。