全 情 報

ID番号 08984
事件名 割増賃金請求事件
いわゆる事件名 泉レストラン事件
争点 定額支給の手当が固定残業代として有効であるかが争われた事案(元労働者一部勝訴)
事案概要 (1) コンビニエンスストアの2人の元店長が、雇用契約書上の記載により、月額賃金250,000円に含まれていた時間外手当70,000円は、時間外、休日、深夜労働に対する割増賃金には該当しないとして、割増賃金の支払を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、原告(X)らに対する定額制の時間外勤務手当制度の適用を認めず、被告(Y)が認めた時間外・休日・深夜労働時間に対する割増賃金の支払を命じ、これと同額の付加金の支払を命じた。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/固定残業給
労働時間(民事)/労働時間の概念/店長の就業時間
裁判年月日 2014年8月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)21034号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1103号86頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 時間外勤務手当の有効性等について
一定額の手当の支払がいわゆる固定残業代の支払として有効と認められるためには、少なくとも、①当該手当が実質的に時間外労働の対価としての性格を有していること、②当該手当に係る約定(合意)において、通常の労働時間に当たる部分と時間外割増賃金に当たる部分とを判別することができ、通常の労働時間の賃金に当たる部分から当該手当の額が労基法所定の時間外割増賃金の額を下回らないかどうかが判断し得ることが必要であると解される。
これを本件について見るに、(中略)本件時間外勤務手当制度は、ポスト職(中略)を除く全従業員を対象に導入していると認められ、そうすると、従業員に実際に恒常的に発生する時間外労働の対価として合理的に定められたものとはいえない。また、Y主張によっても、Xらには、別紙1、2(略)の「被告の計算」どおりの時間外労働がされているところ、Xらの在職中、これらの時間外労働を前提とした割増賃金が支払われていた様子はうかがえない。以上の点からすると、本件時間外手当が実質的に時間外労働の対価としての性格を有しているとは認められず、①の要件は認められない。よって、その余の点について判断するまでもなく、本件時間外勤務手当制度をXらに適用することはできない。
付加金について
本件訴訟に表れた一切の事情を考慮すれば、Yに対し、Xらそれぞれについて未払割増賃金と同額の付加金の支払を命ずることを相当と認める。