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ID番号 09003
事件名 未払賃金請求事件
いわゆる事件名 DIPS(旧アクティリンク)事件
争点 懲戒解雇された元従業員の管理監督者性と不払賃金の支払いが争われた事案(原告一部勝訴)
事案概要 (1) 原告(X)は、被告(Y)に対し、労働契約に基づき、平成22年11月から平成22年12月までの賃金並びに平成21年7月分から平成23年1月分までの割増賃金の支払い等を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、Xは管理監督者に該当せず、営業手当と住宅手当の額も割増賃金の算定基礎額に参入すべきであるとした上で、割増賃金の支給を命じた。
参照法条 労働基準法24条
労働基準法37条
労働基準法41条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/割増賃金の算定基礎・各種手当
賃金(民事)/割増賃金/立法による労基法37条の適用除外
賃金(民事)/割増賃金/固定残業手当
労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/管理監督者
裁判年月日 2014年4月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成23年(ワ)27946号
裁判結果 一部認容、一部棄却、確定
出典 労働判例1094号5頁
審級関係
評釈論文
判決理由 争点1(Xの管理監督者性)について
Xは、テレホンアポイント業務に従事するアルバイトスタッフのシフト管理、アルバイトスタッフの指導等の業務に従事し、マネージャー会議への出席もしていたというのであるが、これらの事実をもって、Yが主張するように、テレホンアポイント部の運営を自身の裁量で行うことができたとまで認めることはできない。
Xにおいては、少なくとも出勤時刻についてはタイムカードによる管理を受けており、毎週月曜日ないし金曜日については早くとも午後9時前後まで勤務していたことが多かったというのであるが、それは専らアルバイトスタッフによるテレホンアポイント業務が、月曜日から金曜日にかけては午後9時前後まで行われることが多かったことによるものであるというべきであって、このことは、Xの職責及び責任の重要性の程度並びに勤務実態が、労働基準法による労働時間規制に馴染まないものということではなく、むしろ、土曜日についてはYが午後8時までの勤務を指示していたこととあいまって、労働時間を自由に定めることができないことを推認させる事実というべきである。
また、Yは、Xに対する支給済み賃金の額が、管理監督者に相応しい高額なものであった旨を主張するものの、管理監督者としての職責の重要度に見合った待遇であるかどうかは、Yにおける他の従業員が受給していた賃金との比較等を踏まえて判断すべきところ、Yは、他の従業員の待遇面については何ら主張立証しない。
よって、Xは、管理監督者に当たるとはいえず、この争点に関するYの主張は理由がない。
争点2(割増賃金の有無及びその額)について
本件賃金規程13条の定めにかかわらず、営業手当を、月30時間分の時間外労働に対する手当として支給し、受給する旨の合意がXとYとの間で成立していたとは認め難い。
よって、営業手当は、基礎となる賃金に算入されるものというべきである。
Yは、Xに支給していた賃金のうち、住宅手当は労働基準法施行規則21条3号により基礎となる賃金から除外される旨を主張する。
しかし、本件賃金規程によれば、住宅手当は、1万円ないし5万円の範囲で支給されるものと定められているものの、これが従業員の住宅に要する費用に応じて支払われていると認めるに足りる証拠はない(なお、Yが主張するように、この手当が扶養家族がいるかどうか、賃貸か持ち家かなどを考慮して支給されているのであれば、住宅に要する費用に応じて算定される手当ではないということになる。また、Yの主張を、住宅手当が、労働基準法37条5項に規定する家族手当と労働基準法施行規則21条3号に規定する住宅手当の混合的性質を有する手当である旨の主張と善解したとしても、具体的に、扶養家族の有無及び人数、賃貸か持ち家か等の要素が支給額の決定においてどのように考慮されているのかは証拠関係上全く不明であって、やはりYの主張は理由がない。)。
よって、住宅手当は、労働基準法施行規則21条3号の住宅手当には当たらないというべきである。