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ID番号 09007
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 北日本電子ほか(外国人研修生)事件
争点 中国人研修生の研修期間中の労働者性等が争われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 原告(Ⅹ)は、旧「研修・技能実習制度」の下、「電子部品組立」を習得する「研修生」として来日した。Xの監理団体は共同組合五光(Y1組合)であり、受入企業は被告(株)北日本電子(Y2社)であるが、Ⅹは労働者であったとして未払賃金等の支払い等を求め提訴したもの。
(2) 金沢地裁小松支部は、平成22年1月以降のXの労働者性を認め、賃金等の支払いを命じた。
参照法条 民法709条
民法710条
労働基準法24条
労働基準法37条
最低賃金法4条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/労働者の概念
賃金(民事)/賃金請求権の発生/賃金請求権の発生時期・根拠
賃金(民事)/割増賃金/支払い義務
賃金(民事)/最低賃金
賃金(民事)/賃金の支払原則/全額払・相殺
賃金(民事)/賃金の支払い原則/賃金請求権と時効
裁判年月日 2014年3月7日
裁判所名 金沢地裁小松支部
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(ワ)77号
裁判結果 一部認容、一部棄却、一部却下
出典 労働判例1094号32頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 争点(1)(原告の労働者性)について
Y2社は、Xに対し、研修実施予定表に従った研修をしておらず、また、残業も命じていたのであるから、Xは形式的には「研修生」であったが、実態に照らすと労働者であったと認められる。
もっとも、Y2社がXに対して研修実施予定表に従った研修を実施せず、残業を命じていたのは平成22年1月以降のことであり、平成21年12月はY1組合が研修実施予定表に従った研修を実施していたと認められるから(証拠・人証略、X本人)、Xが労働者と認められるのは平成22年1月以降のことである。
争点(2)(研修期間中の未払賃金)について
Y2社のある石川県の地域最低賃金は平成21年12月から平成22年10月29日までは674円、同年10月30日からは686円であることは当裁判所に顕箸な事実であって、前記第2の1(2)(略)の研修手当はこれを下回る。
証拠(証拠略)によれば、Xの労働日数は別紙賃金計算表2〈3〉(略)のとおりと認められる。
そうすると、Xの所定労働時間の労働に対して本来支払われるべき賃金(ただし、平成21年12月分は研修手当)は、別紙賃金計算表2(略)のとおり、合計129万6794円であるところ、Y2社は、Xに対して63万3070円しか払っていない。
よって、本来所定労働時間中の労働に対して支払われるべき賃金のうち既払額を控除した66万3724円が未払分である。
Xの時間外手当は、別紙賃金計算表2のとおり、合計39万9671円であるところ、Y2社は、Xに対して20万1000円しか払っていない。
よって、支払われるべき時間外手当から既払額を控除した19万8671円が未払分である。
争点(3)(Yらの不法行為)について
Xが自らの意思で帰国することを望んだというYらの主張は採用できない。
Y2社は、Xからの依頼なくパスポートを取り上げたと認められる。
Y2社は、違法にXの預金通帳を管理していたものと認められる。
本件では、Aは、通訳を同行させて本人と面談することをほとんどしておらず(証人Aの尋問調書)、Xに関しては直接聴取をした形跡が全く窺われない。そうすると、Y?組合は、前記(2)(パスポートを取り上げ)及び(3)(預金通帳の管理)についてY2社の行為を知らなかったとしても、監査義務を懈怠していたといわざるを得ない。
争点(4)(Y2社はXを解雇したか。また、解雇は無効か)について
Xが強制帰国させられた理由はBと会っていたということは前記(略)のとおりであり、それだけでは、上記「やむを得ない事由」にも「技能実習生の責めに帰すべき事由」にも該当するとは認められないから、Y2社によるXの解雇は無効であるといえる。
なお、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えは、既に雇用期間が満了しているから、訴えの利益がなく、却下を免れない。
争点(5)(Y2社の不当利得)について
証拠(証拠略)によれば、雇用契約書及び雇用条件書において、住居費月額2万9885円、水道光熱費月額約3000円を賃金から控除することが定められていると認められるから、Y2社が上記40万2353円を法律上の原因なくして利得したとは認められない。
争点(6)(Y2社がXの帰国費用の負担義務を負うか)について
Y2社は、Xに対し、帰国旅費の負担義務に基づき、帰国費用4万2000円の支払義務を負う。
争点(7)(消滅時効)について
本来研修生であったXを労働者と同様に扱って、それによる利益を享受した上、残業の事実が発覚しないよう隠蔽したほか、Xに対して違法行為をしておきながら、未払賃金を請求されるや消滅時効を援用することは信義則に反するといわざるを得ない。他方、Xは、強制帰国させられそうになってから約2か月後に本件訴訟を提起しており、長期間権利の行使を怠ったという事情も認められない。そうすると、Y2社による消滅時効の援用は、権利を濫用するものとして許されないというべきである。