全 情 報

ID番号 09023
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 千葉県・千葉県がんセンター事件
争点 麻酔科医に対する報復目的の業務命令に対する損害賠償が争われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) Y(被告、控訴人)が設置する千葉県がんセンターの手術管理部(麻酔科)に勤務する麻酔科の医師であったX(原告、被控訴人)が、同部において実施されていた歯科医師の医科麻酔科研修の問題点について、同部の部長を通すことなく、本件センターのセンター長に直接上申をしたところ、同部長から、一切の手術の麻酔担当から外すなどの報復を受け、退職を余儀なくされたと主張して、損害賠償(慰謝料)等の支給を求め提訴したもの。
(2) 千葉地裁は、損害賠償(慰謝料)として50万円等を認容したので、Yが控訴したところ、東京高裁はこれを30万円等に変更した。
参照法条 国家賠償法1条
民法715条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/業務命令
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/担務変更・勤務形態の変更
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2014年5月21日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ネ)419号
裁判結果 原判決変更
出典 労働経済判例速報2217号3頁
審級関係 一審 千葉地裁/H25.12.11/平成24年(ワ)1085号
評釈論文 日野勝吾・季刊労働法248号222~223頁2015年3月
判決理由 X本人尋問の結果(原審)によれば、Xは、手術麻酔及び術前診療の担当から外されたことを動機として、本件センターを退職することを決意したと認められる。なお、Xは、平成22年7月下旬にCセンター長に対して退職を申し出たが、同人から慰留され、また同人に提案されて循環器の麻酔の勉強のために循環器センターで勤務することも検討していたのであり(中略)、この時点では、確定的に本件センターを退職する意思を有してはいなかったものと認められる。また、Xは、麻酔の指導を担当させてもらえないことに不満を持っていたものの(中略)、前記のとおり、上記退職を申し出た際、本件センターにおける歯科医師の医科麻酔科研修の問題点を指摘していたことを踏まえると、これが是正されれば本件センターにおける勤務を継続していた可能性も十分にあったと認められる。そして、麻酔の指導の経験を積むことを希望していたXが、その担当職務を奪われれば、退職に至ることも自然である。これらの事情によれば、D部長によって担当職務を奪われたこととXが退職を決意したこととの間には相当因果関係があると認められる。
Xの請求は、30万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求は理由がない。よって、これと結論を異にする原判決を変更する。