全 情 報

ID番号 09027
事件名 地位確認等控訴事件
いわゆる事件名 日本郵政(苫小牧支店・時給制契約社員A雇止め)事件
争点 契約更新を繰り返してきた契約社員に対する雇止めの有効性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 郵便事業株式会社(郵便事業株式会社訴訟承継人日本郵便(Y))に期間雇用社員として雇用され、雇用期間を概ね6か月として契約更新を繰り返してきたX(原告、被控訴人)が、雇用期間満了をもってされた雇止めは権利濫用であって許されないとして、地位確認等を求め提訴したもの。
(2) 札幌地裁は、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないとし雇止めは有効であるとしたため、Xが控訴したところ、札幌高裁も雇止めは有効であるとした。
参照法条 労働契約法16条
労働契約法19条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事)/解雇権の濫用
裁判年月日 2014年2月14日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ネ)194号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1093号74頁
審級関係 一審 札幌地裁/H25.3.28/平成25年(ワ)3389号
上告、上告受理申立
評釈論文
判決理由 当裁判所も、Xの請求はいずれも棄却するのが相当であると判断する。
Xは、旧会社の業績の悪化は、経営判断の誤りに起因するから、人員削減の必要性は認められるべきではなく、仮に人員削減の必要性が否定できないとしても、本件のようにそれが明白かつ著しい経営判断の誤りに起因する場合には、雇止めに客観的に合理的な理由があるといえるかどうかの認定は厳格になされるべきである旨主張する。しかしながら、上記1(1)(略)で認定したとおり、旧会社の業績の悪化には、IT化に伴う郵便物自体の減少という外部的事情に由来する郵便事業の収益の減少がその要因として認められるのであって、Xが主張するような事情が認められたとしても、人員削減の必要性が否定されるものではない。
旧会社は、退職希望者を募集したり、勤務日数、勤務時間の短縮に関する意向調査を行う際、事前に、Xを含む時給制契約社員に対し、退職希望者が少ない場合には、期間雇用社員の自支店内の配置換又は勤務日数・勤務時間の短縮を実施することとなり、それでも調整がつかない場合は、雇用契約期間の満了日で退職させることがあることや、勤務時間の短縮や担務の変更に応じても、必ずしも雇用契約を更新できるとは限らないことを告知していたことに加え、旧会社において、労働時間の短縮に応じるか否かの意向調査や個別面談を実施した結果、3名の時給制契約社員が労働時間の短縮に応じたことから、労働時間の短縮に応じた3名を除く20名の中から、雇止めをする3名の人選を行うとの方針を立てた段階で、労働時間の短縮に応じた者を除外して、労働時間の短縮に応じなかった者を雇止めの対象者とすることを告知していなかったとしても、労働時間の短縮に応じる者が3名にとどまったことをも併せ考慮すると、その人選が恣意的であるとか手続が濫用的であるなどの特段の事情が認められない本件においては、雇止め回避努力として不十分である(あるいは人選が不合理であり、その手続が不相当である)とまでは認めることができないから、Xの上記主張は採用できない。
なお、Xは、Xに対して受け入れ可能な代替案の提示がなかったことをもって、雇止め回避努力が不十分であったとし、具体的には、始業時間、終業時間を固定した上での労働時間の短縮であれば、Xにおいて、これに応じることも十分考えられた旨主張する。しかしながら、勤務上の必要性に応じて勤務時間帯が指定されるものであることからすると、多数の期間雇用社員のうち、Xのみに始業時間や終業時間を固定するなどの措置を執ることは困難であるから、Xの上記主張は採用できない。