全 情 報

ID番号 09036
事件名 遺族補償一時金不支給決定処分取消等請求事件
いわゆる事件名 国・池袋労基署長(光通信グループ)事件
争点 虚血性心不全により死亡した社員につき、その死亡の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 株式会社光通信の社員であった亡Kの両親である原告Xらが、亡Kは、長年にわたる長時間労働及び精神的負荷を伴う労働によって疲労を蓄積させ、冠動脈硬化が自然経過を超えて著しく増悪した結果、本件疾病を発症して死亡したものであるから、本件疾病の発症及びこれによる亡Kの死亡は業務に起因するものであるにもかかわらず、これを否定した池袋労基署長による遺族補償給付及び葬祭料不支給処分は違法であると主張して、本件各処分の取消しを求め被告Y(国)に対して提訴したもの。
(2) 大阪地裁は、亡Kの死亡は業務上の死亡にあたるとしてXらの請求を認容した。
参照法条 労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法17条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/業務起因性
裁判年月日 2015年2月4日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(行ウ)第188号
裁判結果 認容
出典 労働判例1119号49頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険‐業務上・外認定‐業務起因性〕
 亡Kは、少なくとも本件発症前36か月頃(平成19年3月頃)からの恒常的な長時間労働により疲労を蓄積していたところ、本件発症前15か月頃(平成20年11月頃)から業務が量的にも質的にも更に過重なものとなったことにより、血管病変等(冠動脈の粥状硬化)が自然経過を超えて著しく増悪し、本件発症前10か月頃(平成21年5月頃)からはそれまでに比べれば労働時間は短くなったものの、引き続き1か月当たり45時間を超える時間外労働に従事し、その業務に伴う精神的負荷も相当大きかったことから、それまでに蓄積した疲労を解消することができず、そのため、自然経過を超えて著しく増悪した血管病変等が引き続き維持され、あるいは更に増悪し、最終的には、冠動脈攣縮の発生をきっかけとして、本件疾病を発症するに至ったものというべきである。
 そうすると、亡Kが従事していた業務は長期間の過重業務に該当し、同人には、喫煙及び軽度の脂質異常という私的リスクファクターが存在したことを考慮したとしても、上記業務と本件発症との間には相当因果関係があるものというべきである。(中略)
 したがって、亡Kが従事していた業務は長期間の過重業務に該当し、同人は、当該業務に従事したことにより本件疾病を発症したものといえるから、本件疾病を原因とする亡Kの死亡は「業務上の死亡」に該当するものというべきであって、Xらに対しては遺族補償給付等が支給されるべきであり、これを否定した本件各処分は違法なものとして取消しを免れない。