全 情 報

ID番号 09058
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 市進事件
争点 契約更新を繰り返してきた塾講師に対する雇止めの有効性が問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 千葉県を中心として学習塾「市進学院」(以下「市進」という。)等を経営する被告Yとの間で期間の定めのある雇用契約を締結し、Y経営の学習塾で講師として稼働していたところ、年齢を理由として雇止めされた原告X1と、能力を理由として雇止めされた原告X2が、いずれの雇止めも無効であると主張して、Yに対し、雇用契約上の地位の確認並びに雇用契約に基づく給与及びこれらに対する遅延損害金の支払を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないとし雇止めは有効であるとした。
参照法条 民事訴訟法135条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事)/解雇権の濫用
解雇/解雇事由/勤務成績不良・勤務態
裁判年月日 2015年6月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)16020号
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例1134号17頁
労働経済判例速報2257号16頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
〔解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用〕
 50歳不更新制度は、同制度を支える社会的事実が存在しないのに50歳を超えて雇用契約を更新しないこととするものであるから、定年制度との異同や、雇用対策法との関係について検討するまでもなく、合理性のある制度とは到底認められないし、社会的相当性も到底認められないものといわざるを得ない。学習塾等の経営会社が生徒にとって魅力ある授業を求め、魅力ある授業をできない塾講師について雇用を継続しないこと自体には問題がないとしても、それを実際の基準として具体化する方法とその適用の在り方は慎重に検討されなければならず、50歳不更新制度のように、一律に50歳をもって理想的な授業ができなくなると決めつけることはできないのであって、かかる一律の基準には合理性も社会的相当性も認められないというべきである。
 エ したがって、本件X1雇止めについて、合理性と社会的相当性は認められず、これは、解雇であれば解雇権濫用に当たるものというべきである。
〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め) /短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
〔解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用〕
〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕
 X2については、生徒に「授業がわかりやすい」などと感じさせるには不足があり、授業の進め方等に改善すべき点があったことや、生徒からその旨のクレームがあったこと、E教室長から何回かアドバイスをしたこと等が一応は認められるものの、Yにおいて、これが喫緊の課題として認識され、重大事としての対応がとられるほどの状態であったと認めることはできないから、この点をもって、X2を雇止めにすることに合理性があるとするYの主張はたやすく採用することができない。(中略)
 X2の人事評価については、かかる評価(点数)の基となる事実の存在に疑問があるか、当該評価の妥当性に問題があるというべきであるから、X2の人事評価が劣悪であるということを前提にはできず、したがって、人事評価の点からX2を雇止めすることが合理的であるとはいえない。
 d このほかにもYはるる主張するが、いずれも、以上の認定判断を左右し、X2を雇止めすることが合理的であると認めるには足りない。
 (エ) まとめ
 以上のとおりであって、Yは、様々な事情を挙げて、本件X2雇止めには合理性がある旨主張するが、いずれも合理性を認めるには不十分であり、また、これらの不十分な事情を総合しても十分な合理性を認めることはできないから、本件X2雇止めについて合理性を認めることはできない。