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ID番号 09066
事件名 損害賠償請求控事件
いわゆる事件名 神奈川SR経営労務センターほか事件
争点 使用者による前訴和解の合意事項への違反行為の違法性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 労働保険事務組合である被控訴人Y1(被告)の従業員である控訴人X(原告)が、職場のパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)等による損害の賠償を求めてY1及びY1代表者の被控訴人Y2他一名をYとして提起した訴訟において、平成二四年一一月二六日に裁判上の和解(以下「前訴和解」という。)が成立したにもかかわらず、その後、Y1、Y2及び副会長であるその余のY3らが、前訴和解の合意事項を遵守しないばかりか、Y1の平成二五年度通常総会等で共同してXに対する名誉毀損行為を行ったため、著しい精神的苦痛を受けたとして、Y1らに対し、債務不履行又は共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料の支払を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、Xの請求をいずれも棄却したためXが控訴したところ、東京高裁は原判決を取消し、Xの請求を認容した。
参照法条 民法623条
民法696条
民法709条
民法710条
民法719条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2015年8月26日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ネ)1358号
裁判結果 原判決取消
出典 判例時報2302号117頁
労働判例1122号5頁
労働経済判例速報2260号3頁
審級関係 一審  平成27年1月30日/横浜地方裁判所/第7民事部/判決/平成25年(ワ)3917号
上告、上告受理申
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)‐労働契約上の権利義務‐安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 Yらは、自らが当事者又はその役員として関係する労働事件である前件訴訟において成立した前訴和解について、本来なら、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場に立ち、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないにもかかわらず、専門分野であるはずの労務管理上の対応を誤り、裁判上合意して成立した前訴和解に基づく再発防止義務及び周知義務の履行を怠るというY1の不相当な会務執行を助長したか、少なくとも放置したというべきである。
 したがって、その責任は重大であって、いずれも共同して義務違反の責任を負うところ、前記認定事実に照らし、上記義務違反は、Y1に対する忠実義務違反の責任を伴うほか、Xに対する関係でも、違法であって、故意又は少なくとも過失が認められることから、共同不法行為の責任を負うものというべきである。