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ID番号 09072
事件名 遺族補償一時金不支給決定処分取消等請求控訴事件
いわゆる事件名 国・池袋労基署長(光通信クループ)事件
争点 虚血性心不全により死亡した社員につき、その死亡の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 株式会社光通信の社員であった亡Kの両親であるXら(原告、被控訴人)が、亡Kは、長年にわたる長時間労働及び精神的負荷を伴う労働によって疲労を蓄積させ、冠動脈硬化が自然経過を超えて著しく増悪した結果、本件疾病を発症して死亡したものであるから、本件疾病の発症及びこれによる亡Kの死亡は業務に起因するものであるにもかかわらず、これを否定した池袋労基署長による遺族補償給付及び葬祭料不支給処分は違法であると主張して、本件各処分の取消しを求めY(国、被告、控訴人)に対して提訴したもの。
(2) 大阪地裁は、亡Kの死亡は業務上の死亡にあたるとしてXらの請求を認容したためYが控訴し、大阪高裁は、Yの控訴を棄却した。
参照法条 労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法17条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/業務起因性
裁判年月日 2015年9月25日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(行コ)第42号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1126号33頁
審級関係 一審  平成27年2月4日/大阪地方裁判所/第5民事部/判決/平成24年(行ウ)188号
上告、上告受理申立
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険‐業務上・外認定‐業務起因性〕
原判決を引用して認定説示したとおり(原判決第3の4ないし7)、亡Kは、少なくとも本件発症前36か月頃(平成19年3月頃)からの恒常的な長時間労働により疲労を蓄積していたところ、本件発症前15か月頃(平成20年11月頃)から業務が量的にも質的にも更に過重なものとなったことにより、血管病変等(冠動脈の粥状硬化)が自然経過を超えて著しく増悪したこと、本件発症前10か月頃(平成21年5月頃)からはそれまでに比べれば労働時間は短くなったものの、引き続き1か月当たり45時間を超える時間外労働に従事し、その業務に伴う精神的負荷も相当大きかったことから、それまでに蓄積した疲労を解消することができず、そのため、自然経過を超えて著しく増悪した血管病変等が引き続き維持され、あるいは更に増悪し、最終的には、冠動脈攣縮の発生をきっかけとして、本件発症をしたことが認められる。したがって、亡Kが従事していた業務は、長期間の過重業務に該当し、上記業務と本件発症との間には相当因果関係が認められる。他方、亡Kには、軽度の脂質異常と喫煙という私的リスクファクターが存在したが、前者については、軽度なものにすぎなかったこと、後者については、33歳であった亡Kの3枝全てに約75%もの狭窄という高度の器質的動脈硬化が生じていたことの説明が喫煙だけでつくのか疑問といわざるを得ないこと(後記2(2)エ(ア)〈1〉参照)からして、亡Kの上記リスクファクターをもって、上記相当因果関係の存在を否定することはできない。したがって、亡Kは、当該業務に従事したことにより本件発症をしたものといえ、本件疾病を原因とする一郎の死亡は「業務上の死亡」に該当するから、Xらに対しては遺族補償給付等が支給されるべきである。