全 情 報

ID番号 09098
事件名 公務外認定処分取消請求事件
いわゆる事件名 地公災基金東京都支部長(市立A小学校教諭)事件
争点 市立小学校教員の自殺の公務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 東京都の市立甲小学校の教諭として勤務していた亡Aの父母であるX(原告)らが、Aは公務に起因してうつ病を発症し自殺するに至ったと主張して、地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求をしたが、処分行政庁が公務外認定処分(以下「本件処分」という。)をしたため、その取消しを求めた事案である。
(2) 東京地裁は、Aの自殺には公務起因性があるとしてXらの請求を認容した。
参照法条 労働者災害補償保険法16条
地方公務員災害補償法1条
地方公務員災害補償法31条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性
裁判年月日 2016年2月29日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(行ウ)795号
裁判結果 認容
出典 労働判例1140号49頁
労働経済判例速報2277号15頁
判例地方自治420号54頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性〕
 Aのうつ病発症前に発生した業務上の出来事については、それぞれの出来事を個別に評価すると、強度の精神的・肉体的負荷を与える事象に当たると直ちには認められないが、それに相当することを疑わせるものも含まれており、これらの出来事は、Aの勤務開始直後である平成18年4月から、同年6月頃という短期間のうちに、連続して発生したものであり、かつ、それぞれの出来事は、初めて学級担任を受け持った新任教諭にとって、少なくとも相当程度の精神的又は肉体的負荷を与えるものであったと認められる。そして、これらの出来事により精神的・肉体的負荷を受けていたAに対し、学校等において十分な支援が行われておらず、かえって、その負荷を倍加させかねない発言もあったことを考慮すると、これらの出来事は、全体として業務による強い精神的・肉体的負荷を与える事象であったと認めるのが相当である。
 そして、本件全証拠によっても、Aが、業務以外の負荷及び個体側要因によりうつ病を発症したとは認められないから、Aのうつ病は、公務に起因して発症したものであると認められる。
 Aは、うつ病発症後、一旦病気休暇を取得したものの、静養が不十分なまま、うつ病が治癒しない状態で復帰して、再び業務による負荷を受けるに至ったものであり、業務以外の負荷要因があったことを認めるに足りる証拠はないから、Aの自殺について、上記推定を覆すに足りる事情は認められず、Aの自殺には公務起因性が認められる。