全 情 報

ID番号 09110
事件名 遺族補償給付不支給処分決定取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・中央労基署長(日本運搬社)事件
争点 海外出張者への労災保険法の適用が問われた事案(労働者逆転勝訴)
事案概要 (1) 海外に事業展開する運送会社である株式会社Aの従業員で、中国のIにおいて急性心筋梗塞により死亡したJについて、Jの妻X(原告、控訴人)が、Jの死亡は業務上の死亡に当たると主張して、Y(国・被告、被控訴人)に対し、中央労基署長がなした遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分の取消しを求めた事案である。
(2) 東京地裁はXの請求を棄却したためXが控訴したところ、東京高裁は海外派遣者を対象とする特別加入手続がされていないことを理由に、Jを労災保険法上の保険給付の対象から除外することは相当ではないとしてXの請求を認容した。
参照法条 労働者災害補償保険法36条
体系項目 労災補償・労災保険/労災保険の適用/(3) 特別加入
裁判年月日 2016年4月27日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(行コ)320号
裁判結果 原判決取消
出典 訟務月報63巻3号1052頁
労働判例1146号46頁
労働経済判例速報2284号3頁
審級関係 一審 東京地裁/平成27年8月28日/平成26年(行ウ)315号
確定
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/労災保険の適用/(3) 特別加入〕  労災保険法の施行地内(国内)で行われる事業に使用される海外出張者か、それとも、同法施行地外(海外)で行われる事業に使用される海外派遣者であって、国内事業場の労働者とみなされるためには同法36条に基づく特別加入手続が必要である者かについては、単に労働の提供の場が海外にあるだけで、国内の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのか、それとも、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのかという観点から、当該労働者の従事する労働の内容やこれについての指揮命令関係等の当該労働者の国外での勤務実態を踏まえ、どのような労働関係にあるかによって、総合的に判断されるべきものである。
 Jについては、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮命令に従い勤務する労働者である海外出張者に当たるというべきであり、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務する海外派遣者ではないというべきである。したがって、海外派遣者を対象とする特別加入手続がされていないことを理由に、Jを労災保険法上の保険給付の対象から除外することは相当ではない。