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ID番号 09117
事件名 被保険者資格確認請求却下処分取消請求事件
いわゆる事件名 日本年金機構(ベルリッツ・ジャパン)事件
争点 短時間就労者に対する厚生年金法被保険者資格が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) N株式会社との間で雇用契約を締結し、英語講師として就労していたX(原告)が、平成21年11月9日、M社会保険事務所長(当時)に対し、厚生年金保険の被保険者の資格の取得の確認の請求をしたところ、同年12月4日付けで、これを却下する旨の処分を受けたことから、Y処分行政庁(被告)に対して同処分の取消しを求める事案である。
(2) 東京地裁は、Xの勤務実態から厚生年金保険の被保険者資格を認め、Xの請求を認容した。
参照法条 厚生年金保険法9条
厚生年金保険法12条
厚生年金保険法13条
厚生年金保険法14条
厚生年金保険法18条
厚生年金保険法31条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/中項目12 厚生年金保険法の適用
裁判年月日 2016年6月17日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(行ウ)54号
裁判結果 認容
出典 労働判例1142号5頁
賃金と社会保障1687・1688号101頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/中項目12 厚生年金保険法の適用〕
 厚年法上の標準報酬月額の最低額の定め方や標準報酬月額を決定する基礎となる報酬月額の算定方法から、同法は、労働者のうち、その報酬月額が標準報酬月額を大きく下回る者や、常に月に17日未満の勤務日数を有するにすぎない者は被保険者として想定していないとみるのが相当であるところ、上記(2)エのとおりの厚年法の前身の労働者年金保険法の沿革や、一般に報酬の額は労働時間の長短に相関するといえることも踏まえると、厚年法は、労働力の対価として得た賃金を生計の基盤として生計を支えるといい得る程度の労働時間を有する労働者を被保険者とすることを想定しており、そのような労働者といえない短時間の労働時間を有する者(以下、単に「短時間の労働者」という。)は、厚年法9条にいう「適用事業所に使用される70歳未満の者」に含まれないというべきである。
 したがって、厚年法9条にいう「適用事業所に使用される70歳未満の者」には短時間の労働者は含まれないものと解するのが相当である。
 被保険者とされるか否かについては、上記のような趣旨に照らして、個々の事例ごとに、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して判断するべきものと解するのが相当である。
 Xの労働時間については(略)常勤講師(4H IS)の労働時間と比較して4分の3に近似するものであった上、Nの内部基準を労働時間を基礎に引き直してみれば、同年7月期までの間において、被保険者の資格を喪失するには至らなかったことになるとともに、同年8月期において被保険者の資格を取得することができたことになる。そして、このことに加え、上記各期間において、Xの労働日数は、常勤講師(4H IS)のものと変わりがなかったこと、その報酬の額も、標準報酬月額の最低額を大きく上回っており、十分に生計を支えるこができる額であったこと、事業主との雇用関係も安定していると評価することができることなど、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案すると、平成21年8月当時において、Xについて、短時間の労働者として被保険者から除外するということは相当ではないというべきである。