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ID番号 09122
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 クレディ・スイス証券(懲戒解雇)事件
争点 銀行職員に対する懲戒解雇の有効性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) Y(被告)及びYから部分出向していたA銀行B支店の双方で稼働していたX(原告)が懲戒解雇されたことについて、本件懲戒解雇は無効であると主張して、雇用契約上の地位確認および未払賃金の請求、さらに、本件懲戒解雇は、不法行為を構成し、Xはこれによりパニック障害と診断される状態となり重大な精神的苦痛を被ったと主張して、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案である。
(2) 東京地裁は、本件懲戒解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとし懲戒解雇を無効としたが、不法行為の成立は否定した。
参照法条 労働契約法15条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇/懲戒手続
懲戒・懲戒解雇/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2016年7月19日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)16404号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1150号16頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇/懲戒手続〕
〔懲戒・懲戒解雇/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 Xの各行為はそれぞれ懲戒事由に該当し、その内容からして、Xは相応の懲戒処分を受けて然るべきであると考えられるが、いずれの行為についても懲戒処分を検討するに当たって考慮すべき事情等があり、従前注意、指導といった機会もなかった(弁論の全趣旨)のであるから、これらの行為全てを総合考慮しても、懲戒処分における極刑といわれる懲戒解雇と、その前提である諭旨退職という極めて重い処分が社会通念上相当であると認めるには足りないというべきである。
 諭旨退職及び懲戒解雇は社会通念上相当と認められないとはいえ、Xは相応の懲戒処分を受けて然るべきであると考えられる本件において、前記特段の事情があるとは認められないから、かかる意味でも、本件諭旨退職及び本件懲戒解雇が不法行為を構成するとはいえない。