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ID番号 09129
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 日本総業事件
争点 警備会社社員への1カ月単位変形労働時間制の適用有無等が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 警備業等を目的とする株式会社 Y(被告)の従業員であったX(原告)が、Yに対し、雇用契約に基づき、未払賃金および114条に基づく付加金の支払等を求めた事案である。
(2) 東京地裁は1カ月単位変形労働時間制の適用を否定し、Xの請求を一部認容した。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 労働時間(民事)/変形労働時間/(1) 一カ月以内の変形労働時間
雑則(民事)/附加金
裁判年月日 2016年9月16日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)13926号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間(民事)/変形労働時間/(1) 一カ月以内の変形労働時間〕
 Yは、その就業規則11条でYの臨時社員について1か月単位の変形労働時間制の規定を設け、月末に翌月のシフト表を作成して臨時社員の各日・各週の労働時間を定めている。しかし、就業規則11条で定められた臨時社員の始業終業時刻は、シフト表の当務とされる勤務のみであって、他にシフト表上規定されている日勤や夜勤の始業終業時刻を就業規則で定めてはいない。そうすると、Yのシフト表で定める勤務割は、就業規則に定められた各勤務の始業終業時刻、各勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及び周知方法等に従って作成された各日の勤務割には当たらないから、変形労働時間制を適用する要件を満たさない。
〔雑則(民事)/附加金〕
 労基法114条所定の付加金は、使用者に同法違反行為に対する制裁を科すことにより、将来にわたって違法行為を抑止するとともに、労働者の権利の保護を図る趣旨で設けられたものであり、裁判所が付加金の支払を命ずることができる旨規定されていることからすると、使用者による同法違反の程度や態様、労働者が受けた不利益の性質や内容、前記違反に至る経緯やその後の使用者の対応などの諸事情を考慮して、支払の要否及び金額を検討するのが相当である。本件では、Yは、当初から、1日に8時間を超える時間外労働を前提とするシフトを作成して原告を業務に従事させていたにもかかわらず、当務、日勤、夜勤の別に応じた割増賃金の計算方法や額を明らかにしないまま給与の支払をするのみであり、労基法37条に違反して割増賃金の支払をしないままであったと認められ、これらの諸事情を考慮すると、Yに対し平成24年6月以降の割増賃金と同額の付加金51万1333円の支払を命じるのが相当である。