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ID番号 09131
事件名 給与等請求事件
いわゆる事件名 MITダイニング事件
争点 飲食店従業員による未払い賃金及び残業代が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) Y(被告)の経営する飲食店に勤務していたX(原告)が、Yに対し、未払給与及びこれに対する遅延損害金、未払残業代及びこれに対する遅延損害金、前記残業代と同額の付加金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
(2) 東京地裁は、未払い賃金および残業代の一部につきXの請求を認容した。
参照法条 労働基準法13条
労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/(1) 違法な時間外労働と割増賃金
労働契約(民事)/基準法違反の労働契約の効力
雑則(民事)/附加金
裁判年月日 2016年9月20日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)9374号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔賃金(民事)/割増賃金/(1) 違法な時間外労働と割増賃金〕
〔労働契約(民事)/基準法違反の労働契約の効力〕
 Yは、タイムカードの記録が正確でなく、一部には改ざんがあると主張し、Y代表者もこの主張に沿う供述をするが、どの日時の記録が正確でないのか、あるいは改ざんされているのかが特定されていない上、こういった事実を裏付ける客観的な証拠等が提出されているわけでもないので、採用することはできない。
 本件雇用契約における所定労働時間の定めは、午前10時30分から午後11時前後までの12時間30分前後から休憩時間1時間を除いた11時間30分前後であったと認められる(前記(1)及び(2))が、この定めは、1日8時間制の原則(労働基準法32条2項)に違反しているので、最後の3時間30分前後の部分は無効となる(同法13条)。
 Yは、残業代合計165万0146円と、そのうち平成26年6月分までの残業代合計143万0017円に対する各支払日の翌日から退職の日である同年7月31日までは商事法定利率年6分の、同年8月1日から支払済みまでは賃確法6条1項所定の年14.6パーセントの各割合による遅延損害金及び平成26年7月分の残業代22万0129円に対する退職の後で支払日の翌日である同年8月16日から支払済みまで賃確法6条1項所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金を支払うべきことになる。
〔雑則(民事)/附加金〕
 労働基準法114条所定の付加金は、使用者に同法違反行為に対する制裁を科すことにより、将来にわたって違法行為を抑止するとともに、労働者の権利の保護を図る趣旨で設けられたものであり、未払金と同一額の付加金の支払を命ずることができる旨が規定されていることからすると、使用者による同法違反の程度や態様、労働者が受けた不利益の性質や内容、前記違反に至る経緯やその後の使用者の対応などの諸事情を考慮して、支払の要否及び金額を検討するのが相当であるところ、本件では、付加金の支払を命じることが相当でないような特段の事情も、これを減額すべきほどの事情も認められず、これまでの検討結果を踏まえると、Yに対し付加金の支払を命じることとし、その金額は残業代と同額の165万0146円とするのが相当である。