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ID番号 09142
事件名 地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件
いわゆる事件名 ネギシ事件
争点 妊娠労働者に対する解雇の有効性が問われた事案(労働者逆転敗訴)
事案概要 (1) X(原告、被控訴人)が、Y(被告、控訴人)に対し、YがしたXに対する解雇の意思表示につき、妊娠中のXに対してされたものであり、その妊娠を理由とするものであって、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「雇用機会均等法」という。)9条3項に反し、同条4項により無効であるなどと主張して、雇用契約上の地位を有することの確認並びに同地位を前提とした賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
(2) 東京地裁は、解雇理由として指摘する事実は、その事実が認められないか、あるいは、有効な解雇理由にならないとして、解雇を無効としたため、Yが控訴したところ、東京高裁は、妊娠中の解雇でも、解雇理由が相当であるとして、解雇を有効とし、原判決を取り消し、Xの請求を棄却した。
参照法条 男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条3項、9条4項
体系項目 解雇(民事)/解雇事由/(45) 従業員としての適性・適格性
解雇(民事)/解雇事由/(49)妊娠
裁判年月日 2016年11月24日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ネ)2098号
裁判結果 認容(原判決取消)、附帯控訴棄却
出典 労働判例1158号140頁
労働法律旬報1888号66頁
審級関係 一審 東京地裁/平成28年3月22日/平成26年(ワ)第33637号
上告・上告受理申立て(棄却、不受理)
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/解雇事由/(45) 従業員としての適性・適格性〕
〔解雇(民事)/解雇事由/(49)妊娠〕
 Yは正社員12名、パート12名ほどの小規模な会社であり、検品部門にはそのうち半数の職員が在籍しているところ、Xをこのまま雇用し続ければ、その言葉遣いや態度等により、他の職員らとの軋轢がいっそう悪化し、他の職員らが早退したり退職したりする事態となり、とりわけ検品部門は人数的にも業務的にもYの業務において重要な役割を果たしており、その責任者や他の職員が退職する事態となれば、Yの業務に重大な打撃を与えることになるとY代表者が判断したのも首肯できるものであると認められる。しかも、上記のとおりYは小規模な会社であり、Xを他の部門に配置換えをすることは事実上困難であるから(略)解雇に代わる有効な代替手段がないことも認められる。そして、前記認定のとおり、Y代表者は、これまで再三にわたり、Xに対し、言葉遣いや態度等を改めるよう注意し、改めない場合には会社を辞めるしかないと指導、警告してきたにもかかわらず、Xは反省して態度を改めることをしなかったものである。
 そうすると、Xについては、上記のとおり就業規則に定める解雇事由に該当し、しかも、本件解雇はやむを得ないものと認められるから、本件解雇につき客観的に合理的な理由がないとか、社会通念上も相当として是認できないとかいうことはできない。
 本件解雇は、妊娠中のXに対してされたものではあるが、上記認定のとおり、Xが妊娠したことを理由としてされたものではないことをYが証明したものといえるから(なお、本件解雇の直前にEの妊娠が発覚したが、Eは以後も雇用が継続されており、Yが妊娠を理由として職員を解雇しようとしていたことは証拠上窺われない。)、同条4項ただし書きにより、本件解雇が無効となるものではない。