全 情 報

ID番号 09152
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 プレナス(ほっともっと元店長A)事件
争点 弁当店店長による未払割増賃金請求および安全配慮義務違反による損害賠償請求が争われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 Y(被告)の運営する弁当販売店「B」の店長として勤務していたX(原告)が、Yに対し、時間外・休日労働に対する未払割増賃金の支払いを、またYがXの労働時間を適切に管理する義務を怠ったために、Xは長時間労働を強いられて外傷後ストレス障害を発症したと主張して、安全配慮義務(労働契約法5条)の違反を理由とする損害賠償の支払いを求めた事案である。
参照法条 労働契約法5条
労働基準法37条
労働基準法41条
体系項目 労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者
賃金(民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当
裁判年月日 2017年2月17日
裁判所名 静岡地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)804号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1158号76頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔賃金(民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 Yにおいて、店舗管理手当は、Xの管理監督者性の有無にかかわらず、店長職にある者に一律に支払われる手当であり、新店管理手当は、新しい店舗の店長職を務める者に対して一律に支払われる手当であることからすれば、いずれの手当も、労基法施行規則21条の割増賃金算定の基礎となる賃金から除外されるべき賃金に該当しないというべきである。
 〔労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕
 Xの職務内容や権限からすると、Xが経営上重要な事項の決定等に関与していたとはいい難い部分があり、全くの自由裁量で労働時間を決めることができたとまではいえず、クルーのシフト次第では、労働時間が拘束され得る立場にあったものと評価すべきであり、Xの年収はおよそ326万円程度であったと考えられ、これはY本部の非管理監督者の平均年収と大きく変わるものではなく、また賃金センサスにおける平均年収(466万0500円)より大きく下回るものであるため、各事情を総合考慮すれば、XがYにおいて管理監督者であったとは認めることはできない。
 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 Xの労働時間は、Xが店長職になった平成24年11月1日以降の法定外労働時間は、H店に異動した平成25年5月は100時間を超えているものの、その他の月は、概ね40時間から70時間程度であり、Xが胃腸障害を発症したのは、平成25年9月頃と推測されるが、Xは、発症前3か月間、連休を含め月9日から11日間の休暇を取っていたことからすれば、Xは、十分に休息を取ることができていたというべきであって、そうすると、Xの法定外労働時間が、著しく多かったとまでは認められず、また休暇を十分取得することができていたことからすれば、身体に蓄積された疲労度が甚大であったとも認められないこと、そして、認定事実によれば、Xが店長を務めていた店舗に在籍していたクルーは、概ね20人程度であり、同クルーの人数が、他の店舗に比して著しく少なかった等の事情は認められないことなどの事実関係の下では、YがXの労働時間を適切に管理する義務に反していたとは認めることはできない。