全 情 報

ID番号 09168
事件名 残業代請求事件
いわゆる事件名 プレナス(ほっともっと元店長B)事件
争点 弁当屋店長の管理監督者性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 Y(被告)の元従業員であるX(原告)が、時間外労働についての未払賃金および付加金の支払、賃金から違法に寮費相当額が控除されているとして控除分の未払賃金、ならびにYが健康配慮義務に違反したなどとして、慰謝料の支払いを求めた事案である。
参照法条 民法709条
労働基準法24条
労働基準法41条
体系項目 労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者
賃金(民事)/賃金の支払い原則/(3) 全額払・相殺
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2017年3月30日
裁判所名 大分地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)14号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1158号32頁
労働経済判例速報2317号17頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 :〔労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕
 Yの運営する店舗の店長であったXは、店長として、クルーの採用等の人事やワークスケジュール表の作成など店舗運営に関する一定の権限を有しているとはいえるものの、その職務内容、責任と権限に照らしてみると、主体的な関与は乏しく、Yの経営に関わる重要な事項に関与しているとはいい難く、規定上は勤務時間につき自由裁量が認められていたものの、実態とすれば、クルーが不足する場合にその業務に自ら従事しなければならないことにより長時間労働を余儀なくされており、実際には労働時間に関する裁量は限定的なものであり、また、クルーと同様の調理・販売業務に従事する時間が労働時間の相当部分を占めているなど、勤務態様も、労働時間等に対する規制になじまないようなものであったとはいい難く、厳格な労働時間の規制をしなくとも、その保護に欠けるところがないといえるほどの優遇措置が講じられていたものと認めることは困難であるため、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者、すなわち管理監督者に該当するとは認められない。
〔賃金(民事)/賃金の支払い原則/(3) 全額払・相殺〕
 Yの「寮規程」や「借上げ社宅規程」は、社員が負担する家賃について本人の給与より当月分を当月給与より控除する旨定めていること、Xは、Yの担当者から、寮費は毎月給与から控除する旨の説明を受け、それを認識した上で、「借上げ社宅規程」、「寮規程」を誠実に遵守すること等が記載された「社宅・寮入居誓約書」に自ら署名押印したことが認められるものの、その誓約書の提出が寮への入居の条件であり、それを提出しなければ入居することができないものとみられるから、その他の事情を踏まえてみても、寮費相当額の賃金からの控除が、Xの完全に自由な意思に基づいて行われたものであり、かつ、合理的な理由が客観的に存在するとはいえず、寮費相当額の賃金からの控除は違法無効である。
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 Yは、Xから勤務状況確認表の提出を受け、実労働時間が月200時間を超過した場合には、勤務状況確認表に理由と対策を具体的に記載するよう求め、近隣の店舗の店長に応援の要請をかけるなどの対応やクルーの募集をするよう助言をするなどし、また、従業員に対し、定期的に健康診断を受診させ、電話健康相談や健康相談窓口を設置して、医師等の医療専門家や心理カウンセラーに対する相談ができる体制を整えているなどの事情が認められるのであって、割増賃金では償えないほど、Yによる労基法32条違反の態様が悪質かつ重大であったとは認められない。