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ID番号 09174
事件名 時間外手当等請求事件
いわゆる事件名 乙山彩色工房事件
争点 専門業務型裁量労働制の適用の有無等が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 日本画の画材を使用した絵画制作、彫刻などの彩色及び修復、寺社等に出向き現地での絵画制作、建造物の彩色等の請負を業とする者である Y(被告)との間で労働契約を締結し、X(原告)ら4名が、Xらの業務が専門業務型裁量労働制の対象外業務であるとして未払時間外手当、付加金の支払を、ならびにX1については同意なき賃金減額変更が無効であるとして未払賃金の支払および長時間労働によってうつ病に罹患したとして、安全配慮義務違反による損害賠償金の支払を求めた事案である。
参照法条 民法415条
民法709条
民法710条
民法【平成29年6月2日法律第44号改正後】415条
労働契約法5条
労働契約法8条
労働基準法37条
労働基準法38条の3
労働基準法41条
体系項目 労働時間(民事)/裁量労働
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2017年4月27日
裁判所名 京都地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)3195号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1168号80頁
労働法律旬報1889号42頁
審級関係 確定
評釈論文 塩見卓也・労働法律旬報1889号34~35頁 塩見卓也・季刊労働者の権利322号101~104頁 小川英郎(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1514号116~119頁
判決理由 :〔労働時間(民事)/裁量労働〕
 当該事業所に属する従業員の過半数の意思に基づいて労働者代表が適法に選出されたことをうかがわせる事情は何ら認められない。
 裁量労働制導入にあたりYは就業規則の改定をしたが、改訂予定の就業規則案と共に示された改正点の説明本文は、専門業務型裁量労働制に関して、「労働時間などについて変更(裁量労働制の導入など)」との記載のみであり、周知といえるかは疑問であり、「マネージャー・ミーティング」における説明も、専門業務型裁量労働制を導入するという以上の具体的な説明がなされたと認めることのできる客観的な証拠がなく、就業規則も、保管場所が従業員に周知され、いつでも閲覧し得る状態になっていたということはできないことが明らかであるため、Yが主張する専門業務型裁量労働制用は、未だ、その採用手続が適法に行われたことを認めることができないと言わざるを得ない。
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 X1は、平成二六年六月四日にうつ病との診断を受けたところ、同人は、平成二四年頃から月に一〇〇時間を超える時間外労働を行うことが複数回あり、深夜に及ぶことも複数回あり、合計一六〇時間を超えた月もあったが、Yは、雇用主として労働者の安全管理上、労働時間の監督管理の必要性があるにもかかわらず、専門業務型裁量労働制の採用あるいはX1は管理監督者であるとの理由から、何らX1の労働時間の把握も管理も行っていなかったこと、加えて、Yは、平成二五年一二月度には理由なくX1を課長から係長に降格とし、降格を理由としてX1の月額賃金手取額の一割を超える月四万円の役付手当の減額を行い、そうであるのに、その後もX1の仕事量に変化はなく、平成二六年に入ってからも二月度には約八〇時間、三月度には約一〇七時間、四月度には約九八時間の時間外労働を行なわせていたことを認めることができ、これらは安全配慮義務にはんすることは明らかである。
 Yによる理由のない降格、賃金減額のストレスと、長時間労働の負荷とは、時期的にはうつ病の発症の直前ではないものの、これらを解決するために労働組合に加入したX1に対して、さらに不当労働行為が行われていること、他に、当時、X1にうつ病の発症の原因となるようなストレスがあったことをうかがわせる事情は特段認められないことからすると、X1のうつ病の発症は、Yの上記行為に起因するものと推認することができる。