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ID番号 09175
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 代々木自動車事件
争点 年休申請した定年退職者への時季変更権行使の可否等が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 一般乗用旅客自動車運送事業を目的とするY(被告)の元従業員であったX(原告)が、定年退職に伴う退職金の支払い等、およびYが根拠なく賃金を控除したり、有給休暇の申請を正当な理由なく拒否するなど不誠実な対応をしたことは不法行為に該当するとして、慰謝料の支払いを求めた事案である。
参照法条 労働契約法12条
労働基準法39条
労働組合法17条
体系項目 賃金(民事)/退職金/(2) 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
就業規則(民事)/就業規則と協約
就業規則(民事)/就業規則と慣行
年休(民事)/時季変更権
裁判年月日 2017年2月21日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)9111号/平成27年(ワ)9152号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1170号77頁
審級関係 確定
評釈論文 塩見卓也・労働法律旬報1889号34~35頁
塩見卓也・季刊労働者の権利322号101~104頁
小川英郎(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1514号116~119頁
判決理由 :〔賃金(民事)/退職金/(2) 退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
〔就業規則(民事)/就業規則と協約〕
〔就業規則(民事)/就業規則と慣行〕
 Xの退職自由は定年退職であるため、Yの退職金支給規定6条により特別退職金の支給対象となるが、Yは、退職金算定につき63歳時点までの勤続年数を基準とする平成8年協定書およびその内容を維持する平成14年協定書が適用されるか、またはそれと同内容の労使慣行が成立していたと主張するが、XはY社組合の組合員ではなく、Y社組合の組織率が4分の3以上とは認められないため、平成8年協定書等がXを拘束することはなく、また、退職金支給規定は、就業規則に基づく規定であるため、労契法12条によりこれに抵触する労使慣行の効力を認める余地はない。
〔年休(民事)/時季変更権〕
 Xは、平成24年3月17日ころ、Yに対し、有給申請をしており、Yによる時季変更権の行使が、事業の正常な運営を妨げる場合(労働基準法39条5項但書)に行使されたものであると認められない限り、Yは、Xに対し有給休暇手当を支払うべきこととなる。
 時季変更権の行使には、その前提として、他の時季に有給休暇を取得する可能性の存在が前提となるところ、Xは、定年退職時に未消化有給休暇全ての取得を申請しているのであるから、他の時季に有給休暇を取得する可能性が存在せず、Yにおいて時季変更権を行使することは認められず、Xが出勤しなかったことにより、Yの事業の正常な運営を妨げる事態が生じたとはおよそ認められない。