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ID番号 09180
事件名 地位確認等請求控訴事件(1008号)、同附帯控訴事件(20号)
いわゆる事件名 ジャパンレンタカー事件
争点 使用者の社会保険未加入についての損害賠償請求があらそわれた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) Y(被告、控訴人)とX(原告、被控訴人)は、平成4年4月1日までに期限の定めのある労働契約を締結して、Xはアルバイト従業員として稼働し始め、同月から平成20年頃までは6か月に1回、同年以後は2か月ごとに雇用契約書の更新がなされ、最終の労働期間は、平成26年12月20日までとなっていたところ、Yによる雇止めが無効であるとして、地位確認、未払賃金の支払、不法行為に基づく損害賠償(Yによる社会保険料未納付分)の支払を求めた事案である。
(2) 津地裁は、XY間の労働契約が期間の定めのない労働契約とほぼ同視できるものであり、雇止めは無効であるとして、地位確認請求および未払賃金請求を全部任用、損害賠償請求については一部認容した。Yが控訴し、Xも損害賠償請求の棄却部分について附帯控訴した。
参照法条 労働契約法8条
労働契約法9条
労働契約法19条
労働基準法32条の2
労働基準法37条
労働基準法114条
健康保険法48条
健康保険法161条
厚生年金保険法27条
厚生年金保険法82条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2017年5月18日
裁判所名 名古屋高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ネ)1008号/平成29年(ネ)20号
裁判結果 原判決一部取消、一部認容、一部棄却(1008号)、附帯控訴一部認容、一部棄却(20号)
出典 労働判例1160号5頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 :〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
 Xの業務内容は、6か月あるいは2か月で終了するような期限が決められた業務ではなく、勤務時間帯が夜間であるというだけで、正社員とそれほど変わらない業務内容であり、Xが雇用されていた間、Yから意に反して雇止めにされた従業員はいなかったこと、更新手続は形骸化しており、雇用期間満了後に更新手続が行われることもあったこと等からすれば、XY間の有期労働契約は、期間の定めのない労働契約とほぼ同視できるものであったといえ、Yが主張する本件雇止めの理由は、いずれも合理的な理由たり得ず、これらを総合考慮しても、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 Yの健康保険の届出・納付義務違反によりXが被った損害は124万4822円(損害①)、Yの厚生年金保険の届出・納付義務違反によりXが被った損害は91万5650円(損害②)と認められる。Xは労働契約締結当初から社会保険加入がないことを認識していたと認められる。Xは疑問を抱いてはいたものの、的確な知識もなかったので、不法行為であると認識できていなかったから、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度に損害及び加害者を知っていたとはいえない旨主張するが、YがXに関し健康保険及び厚生年金保険の届出・納付義務を負うか否かについては、公的機関に問い合わせるなどして確認することは容易であることからすると、Xの主張は、採用することができない。
 損害①(124万4822円)に係る請求のうち、平成23年度分までの93万9995円は時効により消滅し、上記請求については、残る30万4827円の限度で理由がある、損害②(91万5650円)に係る請求については、本件訴訟の提起前にすでに3年の消滅時効が経過している平成24年4月分までの分が、控訴人の上記時効の援用により消滅しており、平成24年5月分から平成25年1月分までの損害は、国民年金加入期間149か月分の9か月分とするのが相当であるから、5万5308円(91万5650円÷149×9(四捨五入))の限度で理由があることになる。