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ID番号 09198
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 京都市立浴場運営財団ほか事件
争点 嘱託職員退職金規定の未整備について差別的取扱いの成立が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 Y(被告)財団の正規職員であり、同日、Yが解散したことに伴いY財団を解雇されたX正規職員(原告)らが、労働契約に基づき、Y財団およびY市に対して未払退職金の支払い求め、Y財団で嘱託職員として雇用されていたX嘱託職員(原告)らが、Y財団が嘱託職員の退職金規定を定めていなかったことが、旧パート法8条1項に違反する差別的取り扱いであるとして、Y財団およびY市に対して、退職金規定などに基づき、退職金相当額の支払を求めた事案である。
参照法条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/男女同一賃金、同一労働同一賃金
賃金(民事)/退職金/(12) 退職金と損害賠償
裁判年月日 2017年9月20日
裁判所名 京都地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(行ウ)4号/平成27年(行ウ)39号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1167号34頁
労働法律旬報1906号57頁
審級関係 控訴
評釈論文 竹内(奥野)寿・ジュリスト1513号4~5頁
中村和雄・労働法律旬報1906号36~37頁
水町勇一郎(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1519号122~125頁
中村和雄・季刊労働者の権利325号76~78頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/男女同一賃金、同一労働同一賃金〕
〔賃金(民事)/退職金/(12) 退職金と損害賠償〕
X嘱託職員らとY財団との労働契約は、旧パート法8条2項所定の「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約」であると認められる。嘱託職員であっても主任になる者もいたこと、嘱託職員には他浴場への異動が予定されていないにもかかわらず正規職員にはそれが予定されていた等といった事情も認められず、正規職員と嘱託職員との間での人材活用の仕組み、運用が異なっていたわけでもないことからすると、X嘱託職員らは、旧パート法8条1項所定の「その全期間において、正規職員と職務の内容及び配置の変更の範囲が同一の範囲で変更されると見込まれるもの」に該当すると認めるのが相当である。そして、このようなX嘱託職員らが、正規職員には退職金が支給されるのに対し、何ら退職金を支給されないことについての合理的理由は見当たらず、Y財団が、X嘱託職員らに退職金を支給しないことは、旧パート法8条1項が禁ずる短時間労働者であることを理由とした賃金の決定に関する差別的取扱いであり、違法といわなければならない。
 旧パート法には、労働基準法13条のような補充的効果を定めた条文は見当たらず、旧パート法8条1項違反によって、X嘱託職員らの主張するような請求権が直ちに発生するとは認め難い。もっとも、旧パート法8条1項に違反する差別的取扱いは、不法行為を構成するものと認められ、X嘱託職員らは、Y財団に対し、その損害賠償を請求することができるというべきである。