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ID番号 09200
事件名 遺族補償給付金等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・神戸西労基署長(阪神高速パトロール)事件
争点 高速道路交通管理会社社員のうつ病自殺の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 高速道路の巡回、管制、取締等交通管理業務を24時間体制で行うC社に勤務していた労働者であるAが自殺したこと(以下「本件自殺」という。)に関し、その父であるX(原告、控訴人)が、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、神戸西労働基準監督署長(以下「処分行政庁」という。)から、Aの死亡は業務上の死亡に当たらないとして、これらを支給しない旨の決定(以下「本件各処分」という。)を受けたため、その取消しを求める事案である。
(2) 大阪地裁はXの請求を棄却したため、Xが控訴した。
参照法条 労働者災害補償保険法7条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(12) 自殺
裁判年月日 2017年9月29日
裁判所名 大阪高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)55号
裁判結果 原判決取消、認容
出典 判例時報2372号99頁
判例タイムズ1450号50頁
労働判例1174号43頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(12) 自殺〕
 Aには同僚との関係で業務による相当程度の心理的負荷がかかり、専門部会意見書は、Aは自殺直前にICD-10の「F3 気分(感情)障害」を発症していた可能性が考えられる」としていることのほか、Aは本件自殺当時、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥っていた可能性が高いこと、〈6〉本件において、本件各出来事のほかには、Aが精神障害を発病する原因となる可能性のある、「業務以外の心理的負荷に係る具体的事実」や「Aの個体側要因に係る具体的事実」の存在はうかがわれないこと、以上のとおりの前記(1)の事実によれば、Aは、本件各出来事による心理的負荷によって、本件自殺の直前頃、うつ病を発症したことを推認することができ、業務起因性が認められる。