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ID番号 09210
事件名 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・中央労働委員会(NHK全日本放送受信料労働組合南大阪(旧堺)支部)事件
争点 放送受信料徴収人の労組法上の労働者性が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1)X(原告、控訴人)と委託契約を締結し、放送受信料の集金、放送受信契約締結の取次ぎ等の業務に従事していたLが、Xから業務に使用する端末機器の貸与を取り消され、返還を命じられたことなどについて、Lが加入していた被控訴人補助参加人(以下「参加人」という。)から団体交渉が申し入れられたが、Xがこれに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、参加人が不当労働行為救済命令の申立てをし、大阪府労働委員会(以下「府労委」という。)は、Yと委託契約を締結して上記業務に従事する者(以下「地域スタッフ」という。)は労働組合法上の労働者にあたるとして救済命令を発し、Yが中央労働委員会に再審査申立てしたところ、中労委がこれを棄却する旨の命令(本件命令)を発したため、XがY(国・中労委、被告、被控訴人)に対して本件命令の取消を求めた事案である。
(2) 東京地裁はXの請求を棄却し、Xが控訴した。
参照法条 労働組合法3条
労働組合法7条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/(12)外務員
裁判年月日 2018年1月25日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)178号
裁判結果 控訴棄却
出典 判例時報2383号58頁
労働判例1190号54頁
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/労働者/(12)外務員〕
 労組法上の労働者については、労働契約によって労務を提供する者のみならず、これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含み、これに当たるか否かについては、契約の実際の運用等の実態に即して、事業組織への組込みの有無、契約内容の一方的・定型的決定の有無、報酬の労務対価性、業務の依頼に対する諾否の自由の有無、指揮監督下の労務の提供の有無、事業者性等の事情を総合考慮して判断すべきである。
 地域スタッフは、事業継続に不可欠な労働力としてXの事業組織に組み込まれ、契約内容の重要部分はXにより一方的に決定され、その報酬には労務対価性が認められる。一方で、個別的な業務の依頼に応じるべき関係や、個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え、あるいは、指揮監督を行うという関係は見いだし難いものの、他方で、目標達成に向けて業務に関する事細かな指導を受け、目標達成に至らなかったときは委託業務の削減や本件委託契約の解約等の段階的な措置を講じられることが予定されているなど、その業務遂行が原告の相当程度強い管理下に置かれていることに鑑みれば、本件委託契約で委託された業務全体について、Xの業務依頼に応ずべき関係が存在し、その労務の提供について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められる反面、顕著な事業者性を認めることはできない。
 これらの事情からすれば、地域スタッフは、Xとの交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるのであって、労組法上の労働者に該当すると解するのが相当である。