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ID番号 09212
事件名 未払通勤手当等請求事件
いわゆる事件名 九水運輸商事事件
争点 通勤手当について正社員パート社員間の不合理な差別の有無が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 一般貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社であるYのパート社員であるX1~4は、(1)通勤手当が期間の定めのない労働者に対するものの半額とされていることは労働契約法20条の禁止する不合理な差別に当たる等と主張して、通勤手当の差額合計12万円及びこれに対する遅延損害金の支払、(2)X1~4らに対する皆勤手当を廃止する内容の就業規則の変更は無効であると主張して、未払皆勤手当の支払等を求めた事案である。
参照法条 民法709条
民法710条
労働契約法10条
労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
就業規則(民事)/就業規則の一方的不利益変更/(3) 賃金・賞与
裁判年月日 2018年2月1日
裁判所名 福岡地方裁判所小倉支部
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)17号
裁判結果 一部認容、一部却下、一部棄却
出典 労働判例1178号5頁
労働経済判例速報2343号3頁
労働法律旬報1913号78頁
審級関係 控訴
評釈論文 安元隆治・労働法律旬報1913号24~25頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
 「Yが通勤手当を設けた理由は、Y代表者の供述によれば、少しでも手当が多い方が求人に有利であるというものであり、それ自体、本件相違の合理性を肯定できる理由であるとは考え難い。また、パート社員と正社員のいずれの職務内容も、北九州市中央卸売市場での作業を中核とするものであるから、パート社員か正社員かを問わず、仕事場への通勤を要し、かつ、その通勤形態としても、多くの者が自家用車で通勤しているという点で、両者で相違はなく、パート社員の方が、正社員に比べて通勤時間や通勤経路が短いといった事情もうかがわれないのであって、通勤手当の金額を定めるに当たり、正社員の通勤経路などを調査した上でこれが定められたわけでもない」。「そうすると、本件相違に合理的な理由は見出せず、勤手当が被告に勤務する労働者の通勤のために要した交通費等を填補するものであることなどの性質等にかんがみれば、上記(2)で認定した職務内容の差異等を踏まえても、本件相違は不合理なものといわざるを得ない」。
〔就業規則(民事)/就業規則の一方的不利益変更/(3) 賃金・賞与〕
 Yによる就業規則改定(本件改定)により「皆勤手当が廃止されたことによってXらが受ける不利益の程度は小さくなく、Yが主張する上記不利益の代替措置を踏まえてもその内容が相当なものとは言い難いのであって、また、本件改定の必要性についても疑問があるといわざるを得ない。そうすると、Yが、本件改定に当たっては個別に従業員に説明して同意を取得し、多くの従業員がこれに賛同しているという事情を踏まえたとしても、本件改定(新パートタイマー就業規則)のうち皆勤手当の廃止に関する部分は、同意しないXらに対しこれを法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということはできない」。