全 情 報

ID番号 09214
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 KSAインターナショナル事件
争点 配転命令の業務上の必要性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 海運航空貨物取扱業、通関業等を業とする被告Yの従業員である原告Xが、経営管理本部本部長付参事兼A監査室室長から経営管理本部本部長付参事に異動させる配転命令につき、違法無効な配転命令により損害を受けたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき426万5800円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を請求している事案である。
参照法条 民法709条
民法710条
労働契約法15条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用
裁判年月日 2018年2月28日
裁判所名 京都地判
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1177号19頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕
 「Yは、Xは…根拠不明の役員批判の電子メールを社内で送信したことで始末書を提出したことや、同年12月頃、Fとの間で業務時間中に業務と直接業務と関係のない私用メールをくり返しやりとりしていたことがあった上、…他の従業員に対し、Yが重要顧客であり株主でもあるH社の役員から現金不足で資金繰りに問題が生じているとの指摘を受けた旨の、Yの財政不安を煽る虚偽の内容の電子メールを就業時間中に送信していたことから、A監査室長としては不適格であると判断したことを業務上の必要性として主張する」が、「役員批判のメールの送信は、それにもかかわらず、YはXをA監査室長の地位に就けているのであるから、A監査室長としての適格性に影響を及ぼすものではなかったと認められ」、「Fとの私用メールのやりとりについても、その内容は不明であるから、それがA監査室長としての適格性に影響を及ぼすものとは認められない」。
 「A監査室長の地位が、Yの業務の内部監査と社員の研修を行う立場にあることを考慮しても、この社内メールをもってXがA監査室長として不適格であると認定することは、いささか早計に過ぎるというべきである。そして、XをA監査室長から外すことにより、Xが本件特約による退職金の補てん措置の対象外となることを考慮すると、本件配転命令は実質的に減給措置を伴うものといえ、Xに経済的な不利益を及ぼすものでもある。これらの点を考慮すると、本件配転命令は、Xに経済的な不利益を及ぼしてまで行う業務上の必要性に欠けるというべきであ」り、「したがって、本件配転命令は、人事権の濫用として無効であり、Yがそれを強行したことは、Xに対する不法行為を構成すると認めるのが相当である」。