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ID番号 09217
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 社会福祉法人佳徳会事件
争点 派遣社員給与からの事務手数料天引きの賃金全額払い違反などが問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 認可保育園(以下「本件保育園」)を設置運営する被告Yとの間で保育士として雇用されていた原告Xが、Yがした試用期間満了による解雇、その後の懲戒解雇及び普通解雇並びに期間満了による雇止めはいずれも無効であると主張して、Yに対し、労働契約上の地位の確認および未払い賃金とその遅延損害金の支払いを求めるとともに、XはYからXを退職に追い込むことを目的とした嫌がらせ等を受けた他、本件違法な解雇により精神的苦痛を生じたと主張して不法行為に基づく損害賠償として130万円および遅延損害金の支払いを求めた事案である。
参照法条 労働契約法15条
労働契約法16条
体系項目 労働契約(民事)/試用期間/(2) 本採用拒否・解雇
懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用
解雇(民事)/解雇権の濫用
裁判年月日 2018年2月20日
裁判所名 熊本地判
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ワ)595号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1193号52頁
審級関係 控訴(後、和解)
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)/試用期間/(2) 本採用拒否・解雇〕
 「Yは、Xを雇用するにあたり、Xの保育士としての適格性を判断するための情報は十分に把握していたものといえ、XとYとの雇用関係において、使用者の解約権を留保するための試用期間を定める合理性はない」。したがって「YがXとの試用期間満了により留保解約権の行使としてXを解雇することは、本件NPO法人において無効な解雇を、Yにおいて有効な解雇として転換することに他ならず、試用期間制度を濫用するものといわざるを得ない」。
〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕
〔解雇(民事)/解雇権の濫用〕
 Xが合志市役所に対して、認可外保育所補助金に係る事業実績に関する資料をメール送信したことは服務規程違反行為であり懲戒事由に該当しうるが、その違反については、秘密の漏洩やYの信用毀損等は認められないこと、職場の混乱についても、Yの業務量が増えたというもので、企業秩序の破壊の程度が重大とはいえないこと、Xに企業秩序の維持の破壊の意図までは認められず、調査不足という過失により生じた結果であること、当該行為が原告の解雇後の行為で、事前に職場で相談できない状況であったことを踏まえると、Yが、他の懲戒の履行をせずに、直ちに懲戒解雇とすることは合理性を欠き、社会通念上相当とはいえない。
 普通解雇についても、Xの各就業規則違反について、Yが改善、指導を行った事実は認められず、勤務成績が不良で保育士としての就業に適さないとまでは認められず普通解雇についても解雇権の濫用として無効である。