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ID番号 09222
事件名 公務外認定処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 地方公務員災害補償基金山梨県支部長(市立小学校教諭)事件
争点 週休日の地域防災訓練参加途上での障害の公務災害該当性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 市立小学校の教諭であるX(原告、控訴人)が、週休日(日曜日)に実施された地域防災訓練(本件防災訓練)に参加するため、その会場に向かう途上、その経路の途中にある自らが担任する学級所属の児童(本件児童)の住居を訪問した際(本件訪問行為)、その庭において同住居で飼育されている犬(本件犬)にかまれて傷害を負ったこと(本件災害)について、本件災害は、地方公務員災害補償法(地公法)1条所定の「公務上の災害」に当たるものとして、同法に基づく公務災害認定請求をしたところ、処分行政庁が公務外認定処分(以下「本件処分」という。)をしたことから、Xがこれを不服として本件処分の取消しを求めた事案である。
(2)甲府地裁は、本件訪問行為それ自体は、そもそも地公法1条所定の「公務」には当たらず、また、本件地域防災訓練への参加には「公務」遂行性を認める余地があるものの、本件訪問行為は「出勤又は退勤の途上にある場合(合理的な経路若しくは方法によらない場合又は遅刻若しくは早退の状態にある場合を除く。)」には当たらないから、本件災害は、「公務上の災害」には該当しないとしてXの本件請求を棄却したところ、Zがこれを不服として本件控訴を提起した。
参照法条 労働者災害補償保険法13条
地方公務員災害補償法1条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(1) 業務遂行性
労災補償・労災保険/業務上・外認定/(3) 業務中、業務の概念
労災補償・労災保険/通勤災害
裁判年月日 2018年2月28日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)295号
裁判結果 原判決取消自判
出典 判例時報2396号60頁
労働判例1188号33頁
審級関係 確定
評釈論文 富永晃一・季刊労働法262号215~223頁
星野豊(教育と法研究会)・月刊高校教育52巻11号100~103頁
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(1) 業務遂行性〕
〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(3) 業務中、業務の概念〕
 本件防災訓練への参加が「地方公務員法24条6項の規定に基づく条例に規定する勤務を要しない日及びこれに相当する日に特に勤務することを命ぜられた場合」に当たるか否かが問題となるが、「E市教育委員会からの「訓練当日は、できるだけ多くの教職員が参加できるようにする。児童生徒、保護者にも学校の立場から参加を呼びかける」ようにとの具体的な指導があった」などの事情があり、「各教員が本件防災訓練に不参加を申し出ることは事実上困難な状況にあったと認められ」、「公的な書類には本件防災訓練への参加に関する記載はされていない」などの事情を考慮しても、「本件防災訓練への参加は、C校長の黙示的な職務命令に基づき行われたものとみるのが自然であるから、上記認定基準にいう「特に勤務することを命じられた場合」に当たるものというべきである」。
〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(1) 業務遂行性〕
〔労災補償・労災保険/通勤災害〕
 「本件防災訓練への参加は、D小の児童も参加が予定されており、同小学校の教師らはC校長等から児童や保護者に対して本件防災訓練への参加を呼び掛けるよう求められていたのであるから、本件訪問行為は、その時刻や本件児童等に事前の連絡をしなかったことなどを考慮したとしても、本件防災訓練への参加・移動(通勤)という通勤目的と無関係な目的で行われたものではない上、本件通勤経路(合理的な経路)からの逸脱とは言えない」。