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ID番号 09228
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 井関松山製造所事件
争点 無期契約労働者と有期労働者との間の手当差額の不合理性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 農業用機械器具の製造及び販売等を事業目的とする被告Yとの間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して就労している従業員(有期契約労働者)である原告Xらが、Yと期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している従業員(無期契約労働者)との間に、賞与、家族手当、住宅手当及び精勤手当(本件手当等)の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して、Yに対し、〈1〉当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり、原告らには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用されることになるとして、当該就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認、〈2〉本件手当等については、主位的に、同条の効力により原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として、予備的に、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
参照法条 民法709条
労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年4月24日
裁判所名 松山地判
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)225号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1185号5頁
審級関係 控訴
評釈論文 三輪晃義・季刊労働者の権利328号19~24頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 賞与について、業務に伴う責任の程度が一定程度相違し、無期契約労働者に対してより高額な賞与を支給することで、有為な人材の獲得とその定着を図ることにも一定の合理性が認められること、Xらにも夏季及び冬季に各5万円の寸志が支給されていること、中途採用制度により有期契約労働者から無期契約労働者になることが可能でその実績もあり、両者の地位は必ずしも固定的でないことを総合して勘案すると、一季30万円以上の差は不合理とは言えない。
 家族手当について「配偶者及び扶養家族がいることにより生活費が増加することは有期契約労働者であっても変わりがないから、無期契約労働者に家族手当を支給するにもかかわらず、有期契約労働者に家族手当を支給しないことは不合理である」。
 住宅手当について「住宅費用の負担の度合いに応じて対象者を類型化してその者の費用負担を補助する趣旨であると認められ、住宅手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり、有期契約労働者であっても、住宅費用を負担する場合があることに変わりはな」く、「有期契約労働者には住宅手当を支給しないことは、不合理であると認められる」。
 精勤手当について「精勤手当の趣旨としては、少なくとも、月給者に比べて月給日給者の方が欠勤日数の影響で基本給が変動して収入が不安定であるため、かかる状態を軽減する趣旨が含まれると認められ」、有期契約労働者が「欠勤日数の影響で基本給が変動し収入が不安定となる点は月給日給者と変わりはな」く、「有期契約労働者には精勤手当を支給しないことは、不合理である」。
 「本件手当等のうち、家族手当、住宅手当及び精勤手当については労働契約法20条に違反するが、賞与については同条に違反しない」。